マセラティ・グランツーリスモ・スポーツ

公開 : 2012.05.25 15:04　　更新 : 2017.05.29 19:12

■どんなクルマ？

今年のジュネーブ・モーターショーで発表されたマセラティ・グランツーリスモ・スポーツは、それまでで最もデラックスなパフォーマンスを持つグランツーリスモSに代わるモデルだ。

声高なV8エンジンと、彫刻のようなルックス、そして4人のためのインテリアを上手くまとめあげたグランツーリスモSは、特にアメリカ市場で成功を収めた。従って最新版というべきグランツーリスモ・スポーツは、グランツーリスモSから劇的な変更というよりも、確実なブラッシュアップがされている。

4.7リッターというキャパシティを持つV8エンジンはそのままだが、再設計されたピストン、新しい可変バルブ・タイミング、改善されたエンジン・マッピングなどにより、そのパワーは453bhpにまで上げられた。また、トルクも50.0kg-mから53.0kg-mにまで向上した。

モデルはギアボックスによって2つにわけられる。そのひとつは、MCオートシフトと呼ばれる6速のZF製オートマティックが搭載されるモデルで、そしてもうひとつがMCシフトと呼ばれる6速の電子動作するロボタイズド・マニュアルシフト・モデルだ。このMCシフトと呼ばれるモデルは若干固いサスペンションを持つ。

0-100km/h加速は、MCオートシフトが4.8秒、そしてMCシフトが4.7秒という値だ。

エクステリアでは、MCストラダーレに影響を受けたフレアした新しいデザインのエア・インテイクがフロントバンパーに付けられる。その他の変化は、それほど重要でないかもしれない。ホイール、テールランプ、エグゾースト・パイプ、サイド・スカートなどが新しいデザインになっている程度だ。

インテリアの変化は明らかだ。マセラティはサイド・ホールドの良いシートに再設計しただけでなく、リア・シートのパッセンジャーのために20mmの余裕を生み出している。

ステアリング・ホイールもエルゴノミックなデザインのものに変更され、ペダルやパドル・シフトといった細かいディテールは、トロフェオ・レースカーからインスピレーションされたものが採用されている。

■どんな感じ？

どちらのギアボックスを選択するかはあなた次第だ。

MCオートシフト・モデルは常に柔らかく光沢のある動物のような印象で、それはグランド・ツアラーの優美さを表現しているようだ。DとSの2つのモードがあるが、マセラティは、注意深くこの2つのセッティングをしたようである。デフォルトとなるDセッティングは、エンジンのミッドレンジをサーフィンするように使用する。一方、Sモードでは、シフトダウンの時にはブリッピングで回転をあわせてくれるし、パワーをかければピークの7500rpmまで引っ張ってくれる。

MCシフト・モデルは少しばかり厄介だ。シフトアップはMCオートシフトのようにスムーズではないし、タイムラグも存在する。しかし、それはドライバーの経験が大きく左右する部分でもあり、ロボタイズされたマニュアル・シフトにもそれなりの利益がある。とりわけMモードは非常に改善されていて、マセラティの平均的顧客が満足するレベルとなっている。特に、2速から3速へのシフトアップは釘付けにするほど素晴らしい。

トランスアクスル・レイアウトをとるが、ギアボックスの重さによってその重量配分は変わり、MCオートシフトは前後49/51だが、MCシフトは若干リア・ヘビーになり、47/53というレシオとなる。恐らく感覚的には10%ほど固いスプリングとアンチロールバーが付けられていることもあって、MCシフトはMCオートシフト・モデルよりもロード・パフォーマンスは高い。また、そのサウンドもMCオートシフトよりも大きかった。

■「買い」か？

MCオートシフトは素晴らしいグランド・ツーリングカーだ。4人が乗ることができ、素晴らしいサウンドとカリスマ的なキャラクターを兼ね備えている。しかし、ジャガーXKRとBMW6シリーズは、より快適で高い居住性を有する室内を持っていることは確かだ。

より固い足を持つMCシフトは、あらゆる点でポルシェ911には敵わない。

しかし、そのような選択肢はマセラティの顧客にはあまり関係ないのかもしれない。新たな活力を与えられたグラングーリスモは、古くから続くブランドの持つ神秘性、そして大人の香りがする部分に惹かれるのだから。

(ニック・カケット)