フォード・フォーカスST
公開 : 2012.06.12 16:56 更新 : 2017.05.29 18:55
■どんなクルマ?
フォルクスワーゲン・ゴルフGTIのライバルたるフォード・フォーカスSTの嬉しい復活だ。フォードが前のフォーカスSTの生産を中止してから既にもう2年が経った。新しいフォーカスSTは、厳しい排出ガス規制に対応するため、エンジンが5気筒ではなく4気筒になっての再デビューとなった。
フォーカスSTは、ライバルに対して2つのアドバンテージを持っている。その一つが、22,000ポンド(270万円)からという価格で、もうひとつが247bhpというパワーだ。
搭載されるエンジンは2.0リッターのダイレクト・インジェクションによるエコブースト、足回りはSTスポーツ・チューンド・サスペンションが取り付けられる。ステアリングは、フィードバックされた反力をモーターでアシストするエレクトリック・パワー・アシスト・ステアリング(EPAS)。リミテッド・スリップデフの代わりとしてトルク・ベクトリングが装着される。また、軽負荷の内側のタイヤにブレーキをかけ、外側のタイヤに効果的にパワーを伝えるESPシステムも装備される。
もしこれ以上のハードウェアを望むのであれば、ディーラーでRSモデルをオーダーする必要がある。また、フォーカスSTには3ドア版はなく、5ドアとエステートが用意されるだけだ。
■どんな感じ?
こざっぱりとした室内だ。レカロ・シートは前のSTよりも低い着座位置を持つ。ステアリング・ホイールはテレスコピックとチルト機能を持っているのでベストフィットに調整することができる。そして、油圧、水温、ターボ・ブーストを示す3つの小さな計器がダッシュの中央の上に、ドライバーの方を向いて付けられる。
エンジンは、前のSTからシリンダーの数が1つ減ったが、驚くことにそのノイズが劇的に抑えられている。フォードはこの数ヶ月で雑音を抑えるための努力を相当したに違いない。5気筒の時は騒々しかったエンジンだが、この4気筒は実に静かだ。
ゴルフGTIはパワーではフォーカスSTに劣る。しかし、そのリニアなレスポンスと確実なギアシフトではゴルフの方が優位に立つ。しかし、旧いSTやRSがそうであったように、この新しいフォーカスSTはステアリング・レスポンスにおいてゴルフGTIを上回る。ゴルフGTIとフォーカスSTは、その性格付けが大きく異なるようだ。
そのステアリングはロック・トゥ・ロックが僅か1.8回転で実に機敏だ。コーナーでのフォーカスSTの挙動はルノースポーツ・クリオ200のような感覚で、急激なタックインを発生する。しかし、それは決して悪いベンチマークではない。トルクステアもフォーカスSTが247bhpを持つクルマであることを思い起こさせるだけのものはあるが、極めて少なく抑えられている。
明らかにフォーカスはクリオ200よりも大きい。しかし、その機敏さにおいては非常に似たフィーリングを持っている。上手くコーナーの頂点にクルマを付けたのであれば、リア・ホイールがスリップして、僅かながらオーバーステア気味にコーナーを立ち上がる。但し、ルノースポーツ・メガーヌ・カップほどアグレッシブではない。もし、よりハードな乗り味を望むのであれば、RSを待たなくてはならないだろう。
従ってSTの乗り心地は硬めではあるものの、サポートはしっかりとしている。ロールとピッチも感じされるが、それは良く制御されていて不快なものではない。
■「買い」か?
もちろん買いだ。円熟したホットハッチを望むのであれば、フォーカスSTはベストな選択であることに疑いはない。ナチュラルな感じのステアリングなど、ゴルフGTIにはフォーカスSTにない魅力があるもの事実だ。しかし、フォーカスSTのシャシーは、ゴルフGTIよりも機敏さにおいて優れているのも事実だ。
また、価格においてもフォーカスSTは、ライバルを寄せ付けない設定がされている。ベストで速いフォードを望むのであれば、フォーカスSTは良い選択だろう。
(マット・プライヤー)
フォード・フォーカスST
価格 | 21,995ポンド(270万円) |
最高速度 | 248km/h |
0-100km/h加速 | 6.2秒 |
燃費 | 13.9km/l |
Co2排出量 | 169g/km |
乾燥重量 | 1362kg |
エンジン | 4気筒2000ccターボ・ガソリン |
最高出力 | 247bhp/5000rpm |
最大トルク | 34.6kg-m/1750rpm |
ギアボックス | 6速マニュアル |