【ホンダ新型フリードに試乗】 設計思想に見える優しさも 異例のロングセラーを続けるモデル

公開 : 2024.06.19 11:00  更新 : 2024.06.19 11:45

ホンダの新型フリード(市販予定車)に試乗しました。パワートレイン/デザイン/キャラクターの3点が大きく変わっていますが、現行モデルから使い回しできるタイヤサイズなど、ホンダから顧客へ優しい思いやりも。

最近では異例のロングセラー

現行のホンダフリードが発売されたのは2016年。つまり今年で8年目を迎える。5ナンバーサイズ、1.5Lクラスのミニバンという、数を売る車種としては、最近では異例のロングセラーだ。

理由のひとつに、モデル末期になっても売れ続けていたことがあるのは明らかだろう。2023年の登録車の年間台数でもベスト10に入っていた。

ホンダ新型フリード「市販予定車」へ試乗
ホンダ新型フリード「市販予定車」へ試乗

ではそんな売れ筋を、なぜモデルチェンジすることになったのか。栃木県のテストコースでプロトタイプ(市販予定車)を取材して、パワートレイン、デザイン、キャラクターの3点が大きく変わったと感じた。

パワートレインはハイブリッドが、フィットやヴェゼルにも搭載されている、1.5L直列4気筒エンジンに発電用と走行用の2つのモーターを結合させ、低速ではモーター、高速ではエンジン主体で走るe:HEVに切り替わった。

シビックステップワゴンなどには、同じe:HEVの2L版が積まれているので、国内向けのホンダのハイブリッド車ではフリードだけが、7速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)を用いた方式だった。なので変更は予想できたことだ。

最高出力と最大トルクは、エンジンが106ps/13kg-m、モーターが123ps/25.8kg-mで、フィットと同じだ。

やはり1.5L直列4気筒のガソリン車は、直噴方式からポート噴射方式になった。これも現行フィットやヴェゼルと同じ流れだ。118ps/14.5kg-mという数字もフィットやヴェゼルと一致する。CVTはヴェゼルと同じギア比だという。

時代に逆行しているようにも思えるポート噴射への変更は、フリードのキャラクターを考えれば高性能は必要とされず、逆に直噴独特の音を抑え、コストダウンにも寄与するなどの理由を挙げていた。

シンプルでスマートなフォルム

すでに公開されていたデザインは、フィットやステップワゴンに似た、シンプルでスマートなフォルムに感心した。

人気車種だったのでデザインの一新は悩んだと思うが、一新したパワートレインに合わせて見た目でも新しさをアピールしたという。

新型フリード クロスター(右はホンダアクセスの純正アクセサリーを装着した車両)
新型フリード クロスター(右はホンダアクセスの純正アクセサリーを装着した車両)

シートでは特に3列目に気を配ったとのこと。大人も座れるイスでありながら、現行型より小さく軽く仕上げており、これなら楽に格納できると思った。

3つ目として挙げたキャラクターは、ステップワゴン同様エアーと呼ぶことになった標準ボディと、現行型の途中で加わったクロスターのコントラストが明確になった。新型クロスターはフェンダーアーチも追加しており、全幅が25mm広がって3ナンバーになる。インテリアではシートのオレンジステッチが効果的だ。

乗車定員はエアーが3列シートの6人乗りと7人乗り、クロスターは2列の5人乗りと3列の6人乗りが用意される。

車いす仕様車と助手席リフトアップシート仕様車は、福祉車両のハードルを下げたいという気持ちからクロスターがベースになり、前者はレジャー用途にも使ってもらおうという気持ちから、スロープというグレード名になった。

プラットフォームは現行型から引き継いだ。変えないことで熟成にかけられるパワーを増やすことができたとのこと。2740mmのホイールベースはそのままだが、全長はパワーユニット一新のため45mm伸びて4310mmになった。全高は1755mmだ。

タイヤサイズは現行型と共通。フリードのユーザーは子育て世代が多く、クルマに使えるお金に限りがあるうえに、スタッドレスタイヤが必要な地域も多く、新型に乗り換えてもホイールが使えるようにしたという、優しい言葉が返ってきた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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