クルマ漬けの毎日から
2015.07.16
67歳のイコン
The 67-year-old icon ends UK production for ever
ランドローバーでは生産200万台目のディフェンダーが話題になりはじめているが、私は1ヶ月ほど前、ソリハル工場の生産ラインでディフェンダーのボンネットの取り付け作業をさせてもらった。親切な2人の技術者から大いに助けられてこの作業を行ったが、彼らはボンネットの取り付け作業を1日に106回も行っている。以前から思っていたことではあるが、こういう仕事は一般に考えられているよりはるかに難しく、きめ細かい作業である。
たくさんの人たちがこの特別なディフェンダーにパーツを取り付けているが、なかでも有名なのは冒険家のベア・グリルスだ。彼はこう話した。「ランドローバー・ディフェンダーは私にとってとても身近なクルマで、思い出せないほどたくさんの時間を一緒に過ごしてきました」12月にロンドンのボナムズでこのディフェンダーがチャリティ・オークションに出品される際、グリルスは出席するようだ。そしてその12月に、この67歳のイコンはイギリスで生産終了を迎える。
最近購入したロータス・エリーゼ(製造されたのは15年前)が納車されてから初めての週末を過ごした。以前、同じモデルを持っていたことがあり、色も同じで年式も近いが、このエリーゼのほうがずっとよい。タイヤは柔らかいヨコハマタイヤを履いており、ブレーキ、ドリルドディスク、ダンパーはビルシュタイン製だ。そしてレスポンスのいいエンジンにはスポーツエグゾーストを装着しているが、おそらくチューニングされているだろう。というのも、かつて乗っていた標準の118bhp、Kシリーズよりもパワーを感じるからだ。このエリーゼの総合的な能力が高いことに大満足しているが、ロータス販売店を営む友人のポール・マッティから1万ポンドという極めてリーズナブルな価格でこのクルマを手に入れたことが、とくにうれしい。マッティとのつきあいは長く、今回のエリーゼ以外にも6台のロータスを彼から購入している。
初期のエリーゼを再び手に入れて何よりもよかったと思うのは、私の人生にリンクしていることだ。エリーゼの生産が開始されたのは1996年だが、その2年前に私はオートカー誌(英国版)に“新型ロータス・セブン”というタイトルでエリーゼのスクープ記事を書いた。エリーゼのプレス発表にも行ったし、デザイナーと知り合いにもなった(現在ジャガーのデザイン部門の要職にあるジュリアン・トンプソン)。それに、最初の比較テストにも参加しているし、オートカー編集部(英国版)が長期テストカーとして最初に保有したエリーゼでかなりの距離を走っている。そして今、私のガレージにはエリーゼS1が再び佇んでいる。正しい選択をしたと思う。
数十年前に別の媒体で仕事をしていた時、“日はまた昇る”というタイトルで、自分の考えをまとめた記事を書いたことをなんとなく記憶しているが、これはアルファロメオに起ころうとしていた復活について取り上げた記事だった。情報源がしっかりしていたし、十分な理論に裏付けられていたので、読者の皆さまはこれを面白いと思い、満足していただけたようだった。ただし、その時予測したアルファの復活はまったく起こらなかった。そしてその次も、そのまた次のチャンスでも、アルファの復活は実現していない。
今再び、自動車ジャーナリストたちが “アルファ最後のチャンスのサルーン”と呼ぶ復活のチャンスが訪れようとしており、後輪駆動の新型ジュリアが登場しようとしている。もし自動車業界に関連する願いをひとつだけ持つとしたら、この新型ジュリアが美しく魅力的で、そして何よりも、販売が大成功することを願いたい。オートカーではアルファというブランドの不朽の名声と価値を高く評価してきたが、今こそクルマ造りそのもので成功することが求められている。
忙しい毎日を送るアストンマーティンのトップ、アンディ・パーマーと一緒に時間を過ごせたのはなんとも光栄なことだ。これまで、わずか数時間でこれほどたくさんのことを学んだことはないだろう。パーマーは一日中多忙だったにもかかわらず、私のために時間を作ってくれた。そして彼のオフィスでホワイトボードを使って、マーケティングの基本原則のなかで私が知らなかったことを説明してくれた。なにより心強く感じたのは、アストンのトップが、景気に左右されることなくアストンを守れるほどスポーツモデルのレンジを拡大し、創業102年のこの会社を持続的に利益体質にしようと計画していることだ。そして、新型モデルによって十分な“フリーキャッシュフロー(純現金収支)”を生み出し、極めて重要なその次の世代のモデルレンジに向けて資金を確保しようと考えている。アストンの今後10年が楽しみだ。
長期テスト車のレンジローバーを同僚が休暇で乗って行き、フェラーリも別の同僚がグッドウッドに乗って行ってしまった。残っている長期テスト車はスズキ・セレリオだが、少し小さい。それで、グッドウッドの大イベント、フェスティバル・オブ・スピードには、フォルクスワーゲン・ゴルフRで出かけることになった。ゴルフRは多くの人たちから最高のホットハッチと評価され、これまで造られたクルマのなかでもっとも万能な1台だ。会費を払ってファンクラブの一員になってもいいと思っているほど、私はこのクルマが気に入っている。スペース、スタイリング、ドライビング・ポジション、素材、パフォーマンスのレベル、それにその他多くの点で完璧な決定のもと、ゴルフRが造られていることはまちがいない。このクルマの唯一の欠点は、運転に何の苦労もいらないことだ。いつも近くにライバルがいなければ、ゴルフRがどれほど優秀か気づかずにいても不思議ではない。
このところイギリスでは、未来に必要なクルマとしてディーゼルが適しているかという点に関心が高まっている。政府が大気汚染抑制(NOxと微粒子を抑えること)ではなく、CO2排出量低下を重視してきたことはまちがっていたと最近多数の研究者や新聞の日曜版が主張し、熱心に訴えている。CO2排出量低下を重視する政策が、これまでディーゼル車の販売を後押ししてきた。
ところで、このことが私にどう影響するのかをお話ししよう。わが家では、カミさんが乗っている2008年モデルのフィアット500ディーゼルの買い替えが実行されず、長い間うやむやになっている。カミさんの500はこれまでの排ガス規制、ユーロ5に適合しているが、今年9月から新車登録で義務化されるずっと基準の厳しいユーロ6には適合していない。
9月以降、微粒子のエミッションは2000年と比較すると10分の1に制限される。また、NOxも2000年と比較すると84%削減されることになる。実際、ユーロ6のディーゼルは極めてクリーンで、私たちはこの点を比較的よく理解している。だが、それでもわが家ではガソリン車を選ぶか、それともディーゼル車を選ぶかが議論になっている。最終的には今回もディーゼル車を選ぶのはまずまちがいないと思う(カミさんはローエンドのトルクを楽しんでいるから)。だが、新たにディーゼルを買えば、将来手放す時には売りにくくなっているのは確実だ。古い技術だが完全に健全なディーゼル車は今後どうなるのか? きっと大問題になるだろう。
TVRのボス、レス・エドガーに電話で取材をし、彼とパートナーたちは新型TVR(2017年導入予定)の早期納車を希望する将来のオーナーから手付金の受け取りを開始するというニュースを聞いた。エドガーは将来の顧客からの反応に大いに喜んでいた。早くも何千人もの人たちがオンライン上で関心を示しており、また、順番待ちリストが公式に作られる前に、すでに“数百人”の人たちが手付金を支払う意向を示していたという。
この胸を踊らせる世間の反応からすると、TVRの将来は大いに有望だ。新生TVRのリーダーたちは正しいパートナーを選択したことが、イギリスのスポーツカー・エンスージァストたちから心強い支持を得たといえる。新しいTVRのシャシーとスタイリングはゴードン・マーレーが、パワートレーンはコスワースが手がける。「TVRは順調に進んでいる」 このひと言をお伝えできるまで、いったいどれだけの年月がかかったことだろう。