クルマ漬けの毎日から
2015.09.25
水平線へのドライビングマップ
Back to work after a week away in Porsche Panamera Hybrid
一週間の休暇が終わり、同僚のマッキュルロイのポルシェ・パナメーラ・ハイブリッドに乗って出勤した。最初は、このクルマに少し違和感を覚えるかもしれないが(わかりにくいスイッチと視界が良くないのには少々まごつく)、運転するにつれてだんだんなじんでくる。最近の大型車は視界が良くシート位置が高い場合が多いので、アウディTTと変わらないほど低いシートのサルーンに座ると、なんだかしっくりこない。このクルマの低い運転席に座ると、リアの視界確保よりも空力を優先したデザインのドアミラーと太いピラーのために、このクルマの後方視界がさらに悪くなっていると最初は感じるだろう。だが、いったんこれに慣れ、わかりにくいスイッチの機能を5分ほどかけて理解すれば、すべてがしっくりくる。
パナメーラ・ハイブリッドのインプレッションでは、アクセルのレスポンスにクセがあると言われることが多い。その理由は、内部にずらりと埋め込まれたコンピューターが、ガソリンと電気のハイブリッド制御に加えて、ブレーキングとエネルギーの回生という非常に複雑なタスクを実行しているからだ。そして、これが表に現れてしまっているのだ。
だが、パナメーラ・ハイブリッドのシートは極めて快適だし、ステアリングも極上だ。コーナリンググリップはまさにポルシェの最高レベルであるし、乗り心地のレートも十分に調整できるので、好みに合わせることが可能だろう。そして、活用可能なすべてのパワーを奮い立たせる瞬間が来た時、ドライバーはこのハイブリッドの加速はまさに高性能を誇るポルシェの加速だとわかり、ほっとひと安心するだろう。水平線がものすごい勢いで迫ってくるほど猛スピードで走っていたら、そんなことを感じる余裕もないだろうが。
休日のこの日、BMWi3でコッツウォルズのお気に入りの道をドライブした。i3は現在、私のお気に入りの1台であるが、その理由はこのクルマにはBMW本来のドライビング特性と同時に、優秀な電気自動車がもともと持っている運動性能のアドバンテージ(なめらかな加速、アクセルの完璧なレスポンス、他のクルマならばゆっくりとうるさく進む道でもスムーズに走行するといった点)が備わっているからだ。こういった要素がi3をヨーロッパのベストドライビングEVにしている。
私の秘密のプロジェクトは、かみさんがi3に興味を持つようしむけることだ。そうすれば、わが家にもi3がやって来ることになる。だが、このプロジェクトを成功させるにはまだ時間がかかりそうだ。
早起きしてコッツウォルズから東に向かってベッドフォードシャーへと、なんと旧型スマートでドライブした。私の義母はこの数年間リースでスマート・フォーツーに乗っているが、この日はそのスマートを旧型から新型へと乗り換える日だった。
新型に乗ればちがいを感じるだろうとは思っていたが、好きなクルマ(2013年後半に登録したAT、パワステ装備、色は白)を好きなクルマ(2015年登録のAT、パワステ装備、同じく白)に替えたので、新型がどれほど進化しているかについてはさほど気にかけていなかった。だが率直に、新型スマートは進化していた。
新型の3気筒エンジンはトゥインゴと共有であるが、デュアルクラッチの新型ATを搭載し、旧型で大げさに報じられていたパワートレインの課題を一掃している。(ボディの拡大にともない)トレッドが広くなったことで、この他の大きな欠点も修正された。たとえば、旧型では流れに乗って走ろうとすると、頭でっかちで不安定だったため、大きくロールすることがあった。だが、新型には、段差がある時など路面状況が良くない場合でもまずまずの乗り心地が備わっている。スマートはようやく期待どおりのクルマになったと嬉しく思いながら、この新型を新しいオーナーの元に届けた。
100%EVのジャガーがこの世に存在する。同僚のマーク・ティショーはロンドンの西側の郊外にある自宅近辺で運転していた時、音もなく走る普通とは異なるジャガーXE(ブルー)に遭遇した。近づいて見てみると、このジャガーには‘XE E’と書かれたエンブレムがリアについていた。この‘E’のロゴは、ガソリン仕様の上級モデルにオレンジ色で‘S’ロゴがついているのと同じスタイルだったが、色はブルーだった。ジャガーとランドローバーが純粋なEVのモデルに取り組んでいることはかなり前から知っているが、今回マークが見たクルマがその証拠である。
サー・ジョン・イーガンの非常に面白い本、“Saving Jaguar”をちょうど読み終えた。この本には、ジャガーの激動の10年、1980年から1990年のすべてが記されている。この間、著者のイーガンはジャガーのCEOとして、衰退の一途をたどるブリティッシュ・レイランドからイギリス自動車業界の象徴的存在のジャガーを解放し、また前進を拒む傾向にあった労働組合のボスたちとも戦った。イーガンは、ジャガーの生産台数と生産性を回復させ、ロンドンの株式市場に上場させた。結果論として、彼の仕事はジャガーがフォードに“気の進まない”身売り(1990年)をする準備をしたことにもなった。そしてその後、2008年にジャガーはタタに売られた。
この本はイーガンの功績をバラ色に描いているが、当時報道の現場に居合わせた者として、それは真実だと思う。イーガンは好きでない人々のことも包み隠さず書いているが、この執筆スタイルが読んでいてとくに楽しかった。またこの本は、かしこまらず、明瞭な文体で書かれている。かみさんが証言してくれるだろうが、この本を私は一気に読み終えた。
オートカー編集部(英国版)のフェラーリFFが新しいオーナーの元へ旅立つ時が来た。編集部の少なくとも10人はこのクルマの独特のオーラを楽しんだ。ドライバーの右足を介して発せられる650bhpのV12のパフォーマンスが非常に優れていたのは言うまでもない。幸運なことに、FFの長いノーズと傷つきやすいアルミホイールは、9,000km弱を走り終えた後も無傷のままだ(このホイールの均整のとれたスポークは外側に向かって魅力的に曲線を描いている)。
価格20万ポンドもする高価なテストカーを返却した時はいつも、いくぶんほっとする。フェラーリFFは驚くほど実用性を備えていると同時にフェラーリが築いたキャラクターの強みも持ち合わせている。この点は今後ずっと私の記憶に残ると思う。こういうクルマを造ることは、フェラーリ以外にはできないだろう。