クルマ漬けの毎日から

2015.11.29

次世代からの招待状

Autonomous driving has a big place in our future

 
お金のことは考えずにマクラーレンを1台選ぶとしたら、ケチだと思われるかもしれないが、‘手頃な価格’ の新型570Sを選ぶだろう。570Sを選ぶ理由は、オートカーがこのクルマに5つ星の評価をしているからとか、手が届きそうな価格でベストなマクラーレンだからといった理由だけではない。急勾配の右肩上がりで進歩しているマクラーレンというこの若い会社に魅了されているからだ。570Sは(F1のコメンテーター風に言うならば)、マクラーレン史上最高の完璧なパッケージングだと私は思っている。

先日シルバーストーンでマクラーレンのサーキットデーが開催され、CEOのマイク・フリューイットにも会ったが、この時、マクラーレンはクルマ以外の点でも成功していることがよくわかった。以前のマクラーレンは堅苦しい会社だったが、今は温かで心地よく、なごやかな雰囲気の会社に変わっている。今日、最速のクルマのビジネスで成功を収めるには、単にクルマが素晴らしいというだけでなく、顧客や見込み客にサーキットで実際にクルマを走らせて楽しんでもらうことが大切であるが、マクラーレンは今やその分野でも達人だ。

 

 
スウェーデンのイェーテボリにあるボルボの本社へ行き、2019年までに各モデルにプラグイン・ハイブリッドを追加すること、またテスラのライバルとなるEVサルーンを投入する計画を聞いた。興味深かったのは、ボルボの独立心だった。中国のオーナーのもとでボルボの独立性は弱まるのではないかと多くのメディアは予想していたが、そうではなかった。ボルボのカルチャーは、意外にもミツビシに近いようだ。先週、私はミツビシのカルチャーについて話を聞いたばかりだが、このふたつの会社は異なる点が多いものの、慣習にこだわらず、独立心が強く、プラグインが大好きという点では共通している。制約の多いプレミアムブランドや冒険をしようとしない量販ブランドよりも、こういった進取の気性に富むブランドに目を向けるべきだと感じている。

 

 
久しぶりに新型ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW)を運転した。ショールームで買えるいちばんホットな小型車だ。BMWの3世代目として期待されている速さと洗練性が備わっており、そのキャラクターの要素は2世代目までとほとんど変わっていない。パワーが常にスタンバイしていて、ステアリングがクイックかつ正確で、ドライビングポジションが低いところが私はとても気に入った。このクルマのダンパーを設定したティームのメンバーと握手をする機会にもし恵まれたら、それを誇りに思うだろう。新型ミニJCWのボディコントロールは素晴らしく、しかも乗り心地はいつも快適だ。とはいえ、あのダークなインテリアはどうもなじめない(ディナープレートみたいなデザインはやめてほしいし、スイッチのレイアウトももう少しなんとかしてほしい)。それにミニのスタイリングは、小型のBMWのプラットフォームの影響を受けている。だが、どれも販売に影響がおよぶ事柄ではないだろう。

 

 
早朝の飛行機でイギリスを出発し、2年に一度開催される東京モーターショーへ向かった。ショーの前に自動運転モデルのプロトタイプを試乗するという魅力的な提案を日産がしてくれたので、その試乗から取材が始まった。要約すると、テストドライバーと一緒に自動運転のリーフに乗り、橋を渡って東京湾を横断し、交通量の比較的少ないルートを20分間ドライブするという内容だった。とても有益な体験だった。

私はこの自動運転モデルを運転していない。試乗の間、日産のエンジニアがずっと運転席に座ってはいたが、実際はだれも運転していない。何人かのジャーナリストが試乗を終えて戻って来た時、「素晴らしい」と言っていたが、この感想は少々的外れだと思った。重要なのは、このクルマの走りは不気味なほどに規定どおりという点だ。運転の腕はよいが、自制心があり、融通がきかないベテランドライバーがどんなところでも速度制限をきっちり守り、コーナーを最短コースで走ろうなどとは考えもしない、ちょうどそんな運転だ。

日産のエンジニアたちは3段階の自動運転を考えているが、第3段階のクルマだけが、路上でドライバーの細心の注意を必要としない(このレベルの自動運転は2020年から導入される見込み)。第1段階と第2段階のクルマでは機能の明らかな有効性を見ることができた。だが、現在のイギリスの法令ではドライバーがクルマをコントロールする責任をクルマ自体に任せるという運転方法に対処できるとは思えない。

これまで自動運転にはあまり関心がなかったが、今回の試乗を通して、自動運転は私たちの未来で重要な役割を果たすと実感した。だが、自動運転という名前がどうも今ひとつだ。ターボステアとか、ハイパードライブとか呼ばれていれば、もっと注目を集めると思うのだが……

 

 
東京モーターショーで行われたルノー日産のCEOカルロス・ゴーンのスピーチに魅了された。ゴーンは今回のショーで注目されたテーマ、電動化と自動運転に対するルノー日産のアプローチについて説明した。ゴーンに素晴らしいスピーチライターがいるのはまちがいないが、明快で力強い彼の話し方がそのスピーチに耳を傾ける価値を大いに高める。

フォードのアラン・ムラーリー、フォルクスワーゲンのマルティン・ウィンターコルン、GMのリック・ワゴナーなど自動車業界のかつてのリーダーたちのことが私の頭に浮かんだ(トップとして君臨した期間がこの中で最長だったのはワゴナーだ)。フィアット・クライスラーのセルジオ・マルキオンネは今もトップとして戦いの場にいるが、フィアット・クライスラーが合併相手を探していると表明したことで、業界での彼の威厳は下がった。

 

 
こんな時に休暇をとったのは大失敗だった。その理由は、今週オートカー(英国版)のロードテスターたちが、新型フォード・マスタングV8のテストを行っているからだ。出社していれば、私もマスタングを1時間ほど走らせることができただろうに、休みをとっているのでそれができない。それはそうと、今日この時間までに私のスマートフォンに入った情報によれば、新型マスタングをテストしたロードテスターのコメントに早くも数千人の人たちが反応し、自らが新型マスタングのハンドルを握っているところを想像して胸をときめかせているようだ。ロードテスターのマット・ソーンダーズのコメントをご紹介しよう。「いよいよイギリスでデビューするホットな新型マスタングは、この国の道路にも十分にマッチしている。その走りはドライバーをエキサイトさせるだろう」

ソーンダーズはさらにこう言っている。「マスタングV8は価格がずっと高いライバルに十分匹敵する。だが、低速時の乗り心地には改善が必要だ」 この結論を聞いて、私は喜んでいる。というのも、昨年アメリカで新型マスタングのV8を試乗した時、ソーンダーズとまったく同じことを感じたからだ。マスタングがイギリスの道路でもよい走りをするとわかったので、この価格3万4千ポンドのクルマを私の欲しいものリストのトップに加えたいと思った。だが資金が……

translation:Kaoru Kojima(小島 薫)


 
 

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