社会人1年目、ポルシェを買う。

2016.04.23

第5話:カレラの理由、その試乗。

少し歴史の話をさせてください。

いわゆる911型と呼ばれるポルシェが
最初に人びとの目の前に現れたのは、
1963年のフランクフルト・モーターショー。
901型と呼ばれていたこのクルマの開発を率いたのは
フェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェだった。

356を生みだした彼の父、
フェリー・ポルシェが息子に与えたミッションは、
まず第1に2+2を前提としたリア・エンジン-リア駆動
のパッケージングだったそうだ。

RRで2+2。
これが現在までつづく、ベーシックな911の系譜だ。

70年代には、
ポルシェがRRをやめたかったことも知っている。
その結果として生まれたのが
FRの方式を採った924や968だったわけなのだけど、
販売台数はポルシェの思うように伸びなかった。

ここでポルシェはRRのクルマを軸に、
究めていくしかないと悟ったのだと思う。

しかし、スポーツカーとして一流でありつづけた。

ポルシェのヒストリーには
悲哀と矜持が絡みあっている。
そんなところにも僕は惹かれる。

それに何といっても、911にしかないフォルム。
ルーフ・トップからリアにかけて、なだらかに、
そして伸びやかにつづくライン。
はかなささえ感じられる後端の窄み。
鉄板が内側から膨らんだような
やわらかなフォルムも好きだ。

動力性能としては、誰もが認める一級であるのに、
それを殊更主張しない愛嬌のあるフォルムもいい。

仮にポルシェというメーカーが
この世にまるで存在しておらず、
アジアの新興メーカーが
911シェイプのクルマを発表したとしたらどうだろう?
僕たちはかっこいいというだろうか。

カッティング・エッジ(=先駆的なかっこよさ)
という言葉があるけれど、
ポルシェには(いい意味で)似合わない。
しかし911は、911のシェイプを
パフォーマンスの名のもとに、
ある種のシンボルに仕立てあげたと思う。

僕自身は、物心ついたときから911の
‘あの’ フォルムに憧れていた。
だからこそ、911だと思った。
(なにもIくんに対する対抗心ではない! たぶん!)

そうなれば試乗。
今回はほんとうに買いたいクルマに的を絞った。

お目当ては996型前期の
(マーカーがオレンジではなくなった年式の)
カレラ4。色はシルバー。内装は黒。
距離は3万kmと少しで、車検まで1年あった。
ティプトロニックを組みあわせている。
200万円半ばで、写真で見ても程度がよさそうだ。

実際にお店でみると、写真以上にきれい。
カレラ4ホイールに傷はひとつもなく、
ボディにはかすり傷さえなかった。

シートのレザーもピンと貼っていたし、
ダッシュボードやセンター・トンネルの塗装剥げ
(996は非常に剥がれやすく、剥がれると無残になる)
も見るかぎりなし。これはいいじゃないか。

試乗もしたが、ティプトロに不満を感じなかった。
MTの楽しさも、いやというほどわかっているが、
フラット6の独特な音を、アクセル操作だけで
耳にできるのは楽で、気分がいい。

変速はツイン・クラッチの方が速いに決まっているけど
ふつうのトルコンATより気持ちのいいシフトをするし
ステアリングの ‘−(マイナス)’ スイッチを押せば、
だるさを感じない程度に回転を合わせて
シフト・ダウンしてくれる。

いいじゃん! コレ買いたいなぁ。
見積もりをもらって、るんるん気分で帰った。
そういえばポルシェを本気で買いたいことを
親父に話していなかったなと思い
お店で撮影した写真とともに送った。

僕:996のカレラ4見にいったよ。
父:ミッションは?
僕:ティプ
父:だめ。

あまりのぶっきらぼうさにちょっとムッとしたけど、
「まだMTに乗ったことない」ということに気づいた。

それに別に親父が買うわけではないんだから、
関係ない……とはいえない。
というのも、僕のクルマ人生は、
幼少期に受けた親父の教育? のおかげでもある。
ポルシェ親子ほどのものではないけれど。
 
 
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