社会人1年目、ポルシェを買う。

2016.04.27

第6話:いちおうMTも見てみる。

そもそもMTの試乗が気乗りしなかったのは、
ティプトロに比べて価格面でハードルが高まるという
現実的な理由もあった。

たとえばGoo-netでポルシェ911を検索し、
‘価格が安い順’ で並べかえてみると、
15万kmを超えんとする996型からはじまるわけだが
どれもがティプトロニックを組みあわせている。

ようやくマニュアルの姿がみえるのは、
安い順からならべて20台目くらいから。
しかしながら、修復歴ありだったり、
フル・エアロの外装パーツを組んでいたり、
あるいは四捨五入すると10万kmのクルマばかり。

「これは!」と思えるもの
(僕の場合はできるかぎりストックの状態で
最悪でも10万kmに満たない個体)を見つけると、
すぐに280万円台 ‘から’ という、
かなりつらい状況になる。

ものは相談ということで、
AUTOCARがスペシャルショップ・ナビ
レポートしているルマン・ガレージ
北島社長に聞いてみることにした。

「北島さん、マニュアルの996で、
 できるかぎりノーマルな個体があれば
 教えていただけないでしょうか」

僕のような若造にも気さくに接してくれる北島さんは
「オッケー! わかった!」と応じてくださり
それからは北島さんの連絡を待つ日々がつづいた。

ある日、電話があった。
「どうも、北島です! 上野くん?
 横須賀に996が1台あるみたい。
 左のMT、6万km。258万円て書いてある。
 ぶっかってないし、なんか安いなぁこれ」

親切な北島さんは、いつ、そのお店に入ってきたのかも
調べてくださっていた。なんと6ヶ月も動いていない。
売れなかった理由として、記録簿が残っていないことも
少なからず影響しているのではないかとみた。

見にいくしかない。

キューサンマルのセンパイと一緒に横須賀までいった。
横須賀には、オレンジや黄色のボディをまとい、
20インチくらいのホイールを履いたSUVなど、
都内ではあまり見かけない、自由な改造をしたクルマが
たくさん走っている。

僕たちがいったお店も、輸入車こそあれど、
そういったカスタムカーたちが
たくさん在庫してあるお店だった。
だから目当ての個体がとても浮いてみえた。
エンジンを掛けてみてアイドリングの異音もなかった。
きっとこの個体、ポルシェの専門店だったら
すぐに売れていたに違いない。

辛かったのは、試乗を申しでたときに
やんわりと話を逸らされたことだった。
ポルシェを見にいくお客としては若すぎたのだろうか?
(身構えられるのもいやだから、センパイの930は
すこし離れたコイン・パーキングに置いていった)
あるいは僕たちの態度が
店主さまのお気に召さなかったのだろうか?
何はともあれもう一度出直すことにした。

気づけばお昼の時間を過ぎていたので
例の横須賀のハンバーガー屋さんにいくことにした。

読者の皆さまのなかにはある程度
予想されていた方も多かったようだが
そのお店は ‘ハニービー’ という古くからある
ハンバーガー・ショップだ。
店内のカウンターのむこうには、
‘ORDERS TO GO – おみやげ調整’ という、
オープン当時に、直訳したであろう文字が書かれた
不思議なメニューがぶら下がっている。
でもそれさえ、味わいがある。

ぶ厚いハンバーガーを頬張りながら
「俺がお金があったらたぶん買うよあれ」とセンパイ。

記録簿こそ残っていなかったが、
記録簿がある過走行車、
あるいは記録簿がある事故車よりも
記録簿がない調子がいいクルマの方がいいではないか。
というのがセンパイの意見である。

ハンバーガーで汚れた手をナプキンで拭きながら
「ところで太朗よ、お前、お金用意できてるの?」
いつもセンパイは痛いところを冷静に、
しかもピンポイントでついてくる。
 
 
※今回も最後までご覧になってくださり、
 ありがとうございます。
 
 「もう4回読みました」というメールなど、
 繰り返して読んでくださる方も
 なかにはいらっしゃるようです。
 
 これまでの記事に、すこしずつ
 修正を加えていることをご存知の方も
 増えてきたようですね。

 今後とも、[email protected] まで、
 皆さまの声をお聞かせください。
 もちろん、なんでもないメールだって
 お待ちしております。

 
 

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