2016.05.04
第8話:さて、どうやって買おう? 2
これはかつてない最大のチャンスだと思った僕。
母を言いくるめて再度クルマを買うことにした。
それがNC型のマツダ・ロードスターである。
マツダ・ロードスターは、誰もがたのしいという。
コントローラブル(と、どの本にも書いてあった)
とは、一体どんなものなのかを知りたかった。
外装はワインのようなあずき色で、
内装はファブリック。当然MTで、屋根は幌。
ホイールは17インチ(その時はRS専用だったと思う)
がいいという ‘組みあわせの理想’ もできていた。
日課であるGoo-net散策をしていると、
まさに理想の個体が近所にあるではないか!
1度みにいき、さらに晴れた日に試乗にいった。
この時は母親も連れていき、
これでドライブにいくと、いかに楽しいかを
(すべては本の受け売りであるが)根気づよく伝え、
毎日毎日、地道にしかし徹底的に洗脳していった。
洗脳が済んだのではなく、単にしつこさに折れた母は
最終的に、毎月の支払いは半々。満タン/洗車返し
(メーカーの広報車みたいだ)という条件のもと
僕と共同購入するという決断をくだした。
母も用事以外でもフラリと屋根をあけて
主婦の友だちとドライブにいくことが増えた。
ロードスターって、そういうクルマなのである。
燃費もよかったし、なにより楽しかった。
かなり正直に反応してくれるから、
ていねいに運転しないと痛い目にあうことも知った。
1年と2ヶ月、2万kmを走らせたが、
故障の不安を感じたことは1度もなかった。
これまで乗り継いだクルマみたいに、
急にスイッチが取れたり、インパネがベタついたり、
窓が開かなくなったりすることもなかった。
そんなときに、地元の友人が日産GT-Rを買った。
たしか2010年のモデルだったと思う。
乗ってみて、そりゃもうたまげた。
窓のそとを過ぎさる景色の速さが違うし、
どれほどスピードをだしても、
じっとりと地面に吸いついたまま突きすすむ。
ちょっと前まではるか向こうにあった景色が、
気づいたときには、はるか後ろにある。
(いまはもっとスゴイらしいが)、
ツイン・クラッチの変速の速さにも驚いた。
王者になった気分。もう無敵状態なのである。
「どっしりして、速いクルマに乗らなきゃな」という
勝手な使命感に燃えた僕は、
無性にほかのクルマがほしくなった。
‘このクルマがほしい’ という購入の動機ではなく、
‘なにかに乗りかえてみたい’ という動機ははじめて。
どっしり/そこそこはやい/ツイン・クラッチ/安い
の条件で探すと、自然と5代目ゴルフGTIが浮かんだ。
これが7台目のクルマになった。
外装はシルバーで内装は薄いブラック。
タータン・チェックのシートが ‘らしい’。
これを中古車屋さんで、ロードスターとトレードした。
距離やコンディションを考えると、
僕がちょっと損といったところだろうか。
(リセールまで考えると、だいぶ損だけど。
リセールの安さこそ、エンスーの正義みたいな当時は
そういった思想もあったから、あまり気にしなかった)
変速するたびに「バフッ」と鳴る
バックファイヤの音や、どっしりとした感覚。
モードによって変わる変速のタイミングなど、
ギミックが嬉しくてたまらなかった。
そのあとE60のBMW 530i
(シャンパンの外装にグレーの内装、9万km)
の3.0ℓ直列6気筒を試したいという理由で、
中古車屋さんにてゴルフとトレードする話まで
進んでいたのだが、
(もはや ‘逆’ わらしべ長者の典型かもしれない)
運よくAUTOCAR編集部に紛れこめたことで、
一旦、故郷での自動車遍歴は区切りをうった。
考えてみれば、あと先を考えない買い方。
他力本願であるし、恥かしいことも多かったが、
1日40km、通学のために毎日きっちりと走り、
金曜の夜は友人とヤマに通いつめ、
(だからといってそんなに速くないので悪しからず)
土日も理由をつくってはあらゆる場所へひた走った。
ほんとうに本に書かれているとおりなのか、
身銭を切って自分の目でたしかめられたところには、
ちょっとだけ誇らしい気さえする。
※今回も最後までご覧になってくださり、
ありがとうございます。
この章の半分くらいで、過去の話を終え、
「さてポルシェをどうしましょうか」
という話に移る予定でしたが、
思いのほかスペースをとってしまいました。
なにせ、原稿のストックなどなく、
かなり即興的に書き進めているので、
そこのところをお許しいただけると幸いです。
今後とも、[email protected] まで、
皆さまの声をお聞かせください。
もちろん、なんでもないメールだって
お待ちしております。