社会人1年目、ポルシェを買う。
2016.05.25
第14話:乗れるまでのいろいろ。2
思わぬ好立地に駐車場を見つけることができ、
駐車スペースや値段の面でも幸運が重なった。
つぎは、保険である。
とてもとても憂鬱でならないのは、
契約するまえから月々の支払い価格が高いことが、
最初からわかりきっているからだ。
クルマの車種と僕の年齢が、高くなる理由である。
クルマの名義を父親のものにして、
その家族として乗るということにすれば、
おそらく値段がやすくすむだろう。
これは学生時代からの知恵である。
ただ物理的に僕と実家の距離が離れてすぎている。
家族でお世話になっている担当者に聞いたところ、
そういったことが、できないこともないが
1、印鑑証明などの行き来で時間と手間がかかる
2、ナンバーが実家の管轄のものになる
という、デメリットが生じるとのことだ。
それでなくとも早くポルシェに乗りたいのに、
これ以上、指をくわえて眺めるのはつらい。
すでにポルシェがきてから2日が経っている。
毎夜、バスに乗って笹本編集長のガレージまで
こっそりとポルシェを見にいっているが、
さすが近所の人から通報があるかもしれない。
あと、僕の故郷の管轄のナンバーを引っさげて
都内で乗るというのは、ちょっとはずかしい。
(それくらいに田舎なのです。
そんな考えこそ田舎者の発想なのかもしれないけれど)
こちらであらたに保険を契約することにした。
お世話になったのは山中さんという男の人である。
東京海上日動火災保険株式会社の山中さんは
入れ代わり立ち代わりAUTOCARを訪れる
あらゆるメーカーの車両の保険を一括で管理している。
笹本編集長のガレージにおさまっているクルマたちも、
山中さんのお世話になっている。だから信頼があつい。
とにかく早くポルシェに乗りたいから、
早速連絡先を教えてもらい、ロケとロケのあいまに、
スターバックスで待ちあわせて保険の話をきいた。
(奇しくも涙にぬれた、あのスターバックスだ)
さまざまな種類の保険が用意されていることに驚く。
いかに不勉強であったかを素直に打ち明けてみると、
「上野さん、そんなものそんなもの。
保険って、いざ入ろうとするときに、
はじめて調べるものだから心配いりませんよ」
さわやかな笑い声とともに、なだめてくれた。
僕は今25歳なのだけど、どうやら保険というのは
26歳になって、月々の値段がぐっと下がるらしい。
だから最終的に、車両の保険にはひとまず入らずに、
対人/対物事故のときのみ保険がおりるプランにした。
保険対象者は僕のみ。言い換えれば本人限定だ。
「すみません、できれば月々のコストを下げたくって」
「上野さん、僕が大学生になったばかりのときも
意気揚々とホンダ・プレリュードを買ったのですが、
保険が高かったことを今でも覚えていますよ。
いいじゃないですか。また来年プランを考えれば」
と屈託のない笑顔で山中さんは話してくれる。
いろいろと複雑なはなしやプランがあって、
うなづいていると、気づいたら高価なプランに
なっているのでは……と正直、身構えていただけに
説明のわかりやすさと、山中さんのお人柄に、
心からほっとした。知らない地だからなおさらだ。
極めつけは、
「上野さん、保険とはなにも関係ないときでも、
いつだって電話してきてくださいね!」
というすてきな言葉である。
結果的に支払う金額は8780円/月。
駐車場が9000円/月。ローンが約2万8000円/月。
ひとまず4万5780円の固定コストが確定した。
ちなみに山中さんは、いつもぴたりとしたスーツを着ている。
気持ちのいい日焼けは、週末の少年野球の指導が理由なのだそうだ。
※今回も最後までご覧になってくださり、
ありがとうございます。
あっというまに、時がすぎたような気がしましたが、
実際にちゃんと乗れるまでに15話分も書くことが
あったなんて……。
次回で実際に乗ります。そして失敗します。
今後とも、[email protected] まで、
皆さまの声をお聞かせください。
もちろん、なんでもないメールだって
お待ちしております。