社会人1年目、ポルシェを買う。

2016.06.15

第18話:いろは坂、そのまえに。

初めてのドライブはいろは坂に行くことにした。

小さいころ、
某とうふ系漫画にはげしく影響を受けた僕は、
「東京でクルマを買うことがあったら
 ぜひとも、いろは坂を走ってみたい」
と、切に願っていたのだ。

都心からほどよく離れた場所に足を伸ばすのには
もうひとつの理由があった。

(とても恥ずかしながら)シャカイチ号を納車してから、
発進時に、エンストする回数がかなり増えた。
クラッチ・ペダルの感覚に慣れていないからだ。

踏みこむ際はもちろんのこと、リリースするときも、
位置に関係なく均等につよい力をうけるうえ、
ミートする位置が手前かつ、範囲が限られている。

力を必要としながらも、
なおかつ注意深く繋いであげないと
街中でガクンッとかっこわるいことになる。
シャカイチ号はエンジンをオフにした直後に
エンジンが掛かりにくいという病?
も患っているからなおのこと慌ててしまう。
坂道だとこの世のおわりみたいな気持ちになる。

エンストが増えたことを笹本編集長に相談すると、
「かかと、フロアにつけてるか?」といわれた。
かかとを視点にして、すねの下の部分に力を入れ、
つま先を引きあげると、細かい操作ができるそうなのだ。
空冷ポルシェでも、よくそうするらしい。

余談だけど
ふだんは笹本編集長の豊富なポルシェ体験談を
聞かせてもらうばかりだったから、
そういった話ができるだけでもうれしかった。
それを伝えると「なにいってんだばかだなぁ」と
いっていたが、編集長もちょっとうれしそうだった
気がした。勝手な思いこみかもしれないけれど……。

とにかく、早急にクラッチ・ミートに慣れたかった。

せっかくだからトシキ君も誘ってみることにした。
トシキくんはたしか学年はひとつ下だったはずだが、
学生時代、おなじ地元、九州で
さんざん走りまわった友だちだ。

かつて、彼が乗っていた日産シルビアは、
逆バンクで荷重抜けして山から落っこちて、
林のなかで2回転半したのちに静止。
一緒に乗っていた彼の友人はあまりの衝撃で
パニックになり、そこから2km離れた山中で
警察に保護された。
後日、頭を22針縫ったトシキ君が、
うつろな目でへらへらと笑みを浮かべながら
「トリプル・アクセルまであと半回転でした」
といっていた姿はいま思いだしてもゾッとする。

あまりに酷い事故例として
その写真が今でも地元の警察署に飾られている。

さらに、
日産ワンエイティ(10万円)のフレームを修正するために、
コアサポートと電柱をチェーンで結びつけて
引っぱった挙句、激しくちぎれたチェーンは
くっきりとボディにあたらしい傷をのこした
という伝説も残している。

そんな彼はいま、Z31型の日産フェアレディZ
(彼のおじさんが購入後、
レストア/フル・チューンした特別仕様だ)を
東京に持ちこんでいるから、そのクルマと2台で
いろは坂を目指すことにしたのだ。

午前中はそれぞれの用事があったため、
栃木県は佐野市で待ち合わせた僕たちは、
そこから高速を一切使わずに下道から
アプローチしてみることにした。

そして、いろは坂では、
ポルシェをまったくうまくドライブできないという
ことに、痛く気づかされることになった。
 
 
※今回も最後までご覧になってくださり、
 ありがとうございます。

 サラッと、
 いろは坂ドライブのことを書くつもりでしたが、
 序章のようなものが必要だったことに気づき、
 分割して書いていくことにいたしました。
 
 いつもながら行き当たりばったりですが、
 引きつづき楽しみにしていただけるとうれしいです。
 
 今後とも、[email protected] まで、
 皆さまの声をお聞かせください。
 もちろん、なんでもないメールだって
 お待ちしております。

 
 

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