2016.07.13
第22話:タイヤのいろいろ。2
「タイヤのいろいろ 1。」を公開したあと、
予想していたよりもたくさんの反響があった。
届くメールのなかには、スピンやバーストなど、
現実的に起こった体験談も多くあった。
つぎつぎに届くメールを注意深く読んでいると、
「社会人1年目、ポルシェを買う。」の読者は、
走りに対して敏感であり、よい結果のためならば
できるかぎり出資を惜しまない傾向がある、
ということが次第にわかってきた気がする。
そんな皆さまを思うと、僕自身もできるかぎり
学んだことを共有する必要があると感じた次第。
今回、タイヤの交換でお世話になったのは、
江東区辰巳にあるシノハラタイヤというお店。
交換作業に立ち会わせていただきながら
セールスチームの福井隆司さんに話をうかがった。
ちなみに福井さんは「社会人1年目……」の読者で
予約が入ったタイミングで ‘もしや!’ と思ったそうだ。
交換前のタイヤはブリヂストンのRE050。
なんと右後ろのみ製造年は2004年だったのだそう。
福井さんいわく、理想の交換サイクルは5年。
5年以上経つと、ゴム繊維のあいだに練りこまれる
保護剤が車輪全体に回らなくなるのだそうだ。
スポンジの水が抜けてしまうみたいに。
毎日乗ってあげることが理想だとよく耳にするが
これも保護剤を車輪全体にゆきとどかせるためだそう。
福井さんは「タイヤを揉む」という言葉を使っていた。
写真のように、タイヤがひび割れていたのには
もうひとつ理由があった。タイヤ・ワックスである。
僕はタイヤ・ワックスが好きだ。あれを塗るだけで、
クルマの外観全体がシャキッとした印象になる。
けれど、特に油性はタイヤ内の保護剤を吸いやすい。
「だとしたら落ちやすいけど水性の方がいいですか?」
という問いに対しても、福井さんは、
「わたし個人としてはおすすめをいたしておりません」
ということであった。刹那的な美しさよりも、長い目で
タイヤをいたわる方がかっこいいのだと僕は学んだ。
ひび割れるとだめだということは経験的に知っていても
どうしてだめなのかがわからない。これも聞いてみると
細かい溝(ひび)から水が侵入してしまい、
ゴムにくるまれているスチールベルトがサビてしまう。
ベルトがサビると、貼り合わせている部材が剥がれ、
(これをセパレーションと呼ぶのだそうだ)
剥がれた部分にタイヤ内部の空気が入り込み、
タイヤ表面にこぶが発生し最悪バーストするとのこと。
福井さんがごていねいにも送ってくれた
セパレーションを起こしたタイヤの画像である。
また交換前のタイヤの残り溝に関しては、
左リアの内側(右側)の減りが著しかった。
アクセルを踏みこむと、特にRRのポルシェの場合、
タイヤがハの字になりやすく、内減りしやすいのだが
左側通行の日本の道路の場合、歩道側(左側)が
雨水をさばくために下がっているのだそう。
これがリアの内側(右側)ばかりを減らす理由だそうだ。
せっかくだから慣らし期間の理想についても、
プロフェッショナルに聞いてみることにした。
100kmを走らせたところでボルトを増し締めし、
200km程度で表面保護剤が消えるのだそうだ。
1000kmを超えるとタイヤの当たりが変わる。
当たりが変わるというのはつまり、
表面の被膜を取り除かれ、熱が加わり変質することで
本来の性能を発揮できる状態になることだそうだ。
空気を入れて使用する事でタイヤがわずかに大きくなり
(これを寸法成長という)これらが全て落ち着くのも
1000kmを走ったころなのだと教えてくださった。
急発進や急ブレーキ、高速域でのコーナリングも
1000kmまでは避けたほうがいいとのことである。
ちなみにポルシェ996カレラの指定空気圧は、
17インチは前後ともに2.5kg/平方センチメートル。
駆動輪ほど空気圧を高くするする方がいいと、
勝手に思いこんでいたのだけど。
前輪よりも後輪の方が太く、径が大きいから
空気圧を揃えていても問題ないのだそうだ。
過渡的な走りをしないかぎり、
メーカー指定の空気圧が好ましいとのことで、
次のページで触れる、ポルシェとミシュランの
共通する思想も少なからず関係しているようだ。
※今回も最後までご覧になってくださり、
ありがとうございます。
タイヤひとつにしても、
乗る前から驚かされることが多い。
今後とも、[email protected] まで、
皆さまの声をお聞かせください。
もちろん、なんでもないメールだって
お待ちしております。