社会人1年目、ポルシェを買う。

2016.08.31

第29話:シャカイチ号、事故る。こまかい話。

できれば翌日よりあとに仕事を回したくなく、
今日中に処理しておこうというのが、
そもそものはじまりだった。

21時くらいにおよその目処がついて、
「そろそろ帰ろうかな、
 でもせっかく夜が涼しくなったんだから
 すこしだけ遠まわりするのもいいかなぁ」
なんて考えていると、友だちから電話があった。

目的地は港区。
夜の渋滞も落ちついているだろうから、
三軒茶屋から国道246号で渋谷まで向かい、
そこから六本木ヒルズの脇を通り抜けて……。

田舎者の僕にとっては、まさに
「おれって東京にいるぜぇ」と、
ジコマンに浸れる最強のルートである。

「30分くらいでいけるとおもう」電話をきる。
いそいそとクルマに乗りこみ、オーディオをON。
それはそれは気もちのよい夜であった。

信号待ち。
となりには屋根をあけた日産Zロードスターがいる。
ヒップホップの低音を響かせている。
こちら側も自然と気もちがたかまる。

信号は青、Zは左にまがり、渋谷駅へ。
僕は直進。東京! 最高!
 
 
ガシャン! パリンパリンパリン……。

とにかく、これまで味わったことのない、
とっても心地のわるい音だった。
前をみると、ハザードをつけて、
タクシーがとまっている。

「あぁ、やってしまったなぁ」である。

2車線の道、僕が左、タクシーが右、並走。
どちらかが寄ったからぶつかったのだろうか。

お互いに怪我がないことを確認し、
警察に来てもらって、
もろもろの処理を済ませるあいだも
ほとんど話があたまに入ってこない。

このあと会う予定だった友人が駆けつけてくれて、
あいだに入ってくれたことが、とてもありがたかった。

           ■

あとは東京海上日動の山中さんにお任せするしかない。
しかしやっぱり「これからどうなるのか?」
と、とめどなく考えてしまう。

なにか作業をしているあいだは考えずにすむものの、
ふとした拍子に事故のことを思いだし、
からだから一切の熱がひくような感覚になる。
考えないようにすればするほど考えてしまう。
この1週間、ずっと、そんな繰り返しだった。
(もちろん、たったいま、この瞬間もである)

「ふらっと右によることがあるから気をつけな」と、
笹本編集長の移動用のクルマを運転中に、
さり気ないアドバイスしてもらったのが3日前のこと。

「最近の若い子はもっと運転に集中すべきだよなぁ」
遠まわしに、カメラマンから注意されたこともある。

「タクシーとぶつかったときは、まじで大変だったよ」
と、いつか友だちが言ってたこともあったなぁ。

とにかく相手をふくめ、だれも怪我をしなかったことが
不幸のなかのさいわいと思うほかないけど、
いったいこれから、どれくらいの修理代がかかるのか。
いちばんの、悩みどころであることは間違いない。

           ■

AUTOCARのスペシャルショップ・ナビ
掲載されている、‘ボディーショップ カワナ’
トンカツ先輩を介して値段を問いあわせてもらう。

フェンダー交換が最良の選択とのことで、
事故相手のプライバシーの保守義務があるため、
厳密には値段は書けないけれど、
僕にとってはとんでもない値段。

ついこの前までは、
どうやったらポルシェを買えるかに
知恵を絞りだしていたとおもえば、今度は修理代。

もちろん、事故を起こしたのが悪いのですよ。
だけどもう、考えることが嫌になりました……。
 
 
※今回も最後までご覧になってくださり、
 ありがとうございます。
 
 1週間先の動きさえ読めないので、
 次回のタイトルは未定とします。

 こういうときにかぎって、
 友だちのFacebookの投稿が、
 キラキラと輝いてみえてくる。

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 もちろん、なんでもないメールだって
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