社会人1年目、ポルシェを買う。
2016.10.27
第37話:シャカイチ号、交差点で停まる。2
交差点でエンジンがかからなくなると、
どれほど絶望的な気もちになることか。
状況を今一度くわしく説明すると、場所は東京都立川。
信号が赤だったのを確認し、
前のクルマと同じように静止したときに
エンジンが、文字どおりストンと落ちた。
エンストにしては穏やかな落ち方だったけれど、
「キーをひねればエンジンはかかるもの」と思い
キーをひねったところ、メーターがパッと光ったきり
うんともすんともいわない状況になった。
じつはこういったことは前にも何度かあった。
エンストしたあとに(いまだにする)、
エンジンがかかりづらいのである。
意図的にエンジンをOFFにした直後ならば、
キーをひねりさえすればエンジンはふつうにかかるのだが。
かかりづいらい場合は、いったんキーを抜いて、
車内からリモコンキーでドア・ロックして、
ロック解除してキーをひねる。そうするとかかる。
それでもかかりづらい場合は、
ほんのすこしアクセルを煽りながらキーをひねると、
よわよわしいもののエンジンがかかっていた。
かかりさえすれば、
肝心な「どうしてかからなかったか」を、
あまり深く考えなかった。
(原因こそたいせつなのは頭ではわかっていても、
お金がかかりそうなだけに、
「この案件にかんしてはいったん置いておいて」
という都合のよい思考になったのであった)
ただ、なんとなく今回ばかりは、
「いままでのツケがまわってきた」感があった。
いままでと同じようにロックしたり、解除したりして
キーをひねってみたが、かかる気配がまったくなかった。
20回くらい繰りかえしたとおもう。
ふとルーム・ミラーからうしろを確認すると、
後方にはズラリと長蛇の列ができてしまっていた。
さいわいクラクションを鳴らしたり
罵声を浴びせてきたりする人はいなかったけれど、
あきらかに隣を通りすぎるクルマたちからは
ひややかな視線が投げかけられていた。
「さすがにまずいな」とおもい、
ふと左を見ると、
ホンダのショールームがあった。
ガラス張りのむこうのひとたちも
やはりこっちを見ているようだった。
よろよろとクルマを降り、ショールームに入ると、
6名くらいの従業員さんが、もう準備してくれていた。
「すみませんちょっとクルマが止まって……」
「のようですね! おい、ちょっと手伝ってくれ〜」
と従業員のかたに声をかけてくれたのは
ホンダカーズ東京中央 日野橋店の吉川さんだった。
総勢6名で同店の駐車場まで押してもらった。
駐車場にとめてあったフィットとつないでもらい
バッテリー・ジャンプを試みるとエンジンがかかった!
そのまま家にもどり、翌朝ルマン・ガレージに駆けこんだ。
(朝、エンジンがかかるか不安で、ものすごくドキドキした)
さっそくチェックしてみると、
電圧はエンジンOFFの状態で12.8V、ONで13.5V。
どうやらバッテリーが劣化しているようだ。
ただ、要因はほかにも考えられるので、
在庫していた新品のバッテリーをお借りして、
数日間ようすを見て、正常に動くようであれば
あらたにバッテリーを買うということになった。
「バッテリーが弱ってそうだから」という理由だけで
すぐに交換しても、仮に原因がバッテリーでない場合に
ムダなコストがかかるという判断のもとの処置だった。
シロウトの僕ならすぐに交換していただろう。
結果的に、バッテリーが弱っていたのが原因だったようだ。
前回交換時から7000kmあまりしか走っていないけど、
5年半がたっていた。寿命といってもいいそうだ。
購入したのはACデルコのLBN4(送料込み13,310円)。
信頼性とコストの面でえらんだ。無理をいって、
工賃だけをお支払いする持ち込み交換をしていただいた。
バッテリーの支払いはクレジット。
どうにかして支払いを遅らせる作戦である。
交換したあとは勢いよくエンジンがかかった。
お礼をいうと北島さんは、
「ま、つぎはスターターが逝くだろうな〜」と
満面の笑みでおっしゃるではないか……。
安心して乗れるのはいつになることやら。