クルマ漬けの毎日から
2017.03.26
ルノー・ゾエ、モーガン、フォルクスワーゲン・パサート・オールトラック。今週のクロプリー編集長は、クルマの理想(ユートピア)について思いを巡らしています。
ユートピアの発見
the Utopian nature
このところ、水素自動車とラグジュアリーなハイエンドカーに関心が向いていて、素晴らしいと思っている別のタイプのクルマのことを忘れてしまっていた。そのなかの一台が、航続距離の伸びた新型ルノー・ゾエだ。ロンドンの私の家の近くに住む人が最近、新型ゾエを買った。このゾエを少し運転させてもらい、このクルマ独特の長所を思い出した。ゾエにはシティカーのコンパクトさと電動駆動の力強くて静かな発進の両方が備わっている。こういうクルマはゾエ以外には見あたらない。そろそろ他のメーカーも、妥当な航続距離を備える小型EVをラインナップに加える時期が来たようだ。
バーミンガム近郊のマルヴァーンに本拠を置く家族経営のスポーツカーメーカーといえばモーガンであるが、その元社長のチャールズ・モーガンが、新たに結成される「家族経営会議」のメンバーに加わるよう要請されているというニュースを読み、嬉しく思った。
大手自動車メーカーとは一線を画するこの会社には、ハブキャップに刻まれたモーガンという名前を持つ人がなるべく多く必要だと思う。ユートピアン・ネイチャーとでも言うべき「理想主義的な気質」に魅力を感じてモーガンを買い求める人たちの割合は、今でもかなり高い。モーガンは1世紀以上前に創業した時にハンドメイドによる自動車製造を開始し、以来ずっとそうやってクルマを造り続けている。そしてこれ以外の野心を持とうとは、まったく考えていない。
フォルクスワーゲン・パサート・オールトラックで往復のドライブをし、興味深い時間を過ごした。オールトラックはステーションワゴンのパサート・ヴァリアントを堅牢にし、ドライビングポジションを高くしたモデルで、単純に公道を走るだけでなく、さらに難易度の高い走りを可能にする装備が追加されている。往路では、私の評価は否定的だった。というのは、もし私と同年代の人が、このクルマは自分にはあまりにも保守的すぎると感じたら、それは何を意味するのだろうと考えていたからだ。
だが帰路では、この6速パドルシフトのギアボックスは最近の8速や9速と比べていかにコントロールしやすいかということに、まず気がついた。それから、どの部分もむらなく優秀なクルマは、いかに少ない称賛しか得られないかということを考え始めた。パサート・オールトラックには素晴らしいトランスミッション、ほどよい快適性、素晴らしい視認性が備わっている。風切り音もないし、オーディオは高級で操作も簡単だ。試乗を終えた時には、もっとこのクルマを走らせたいという気持ちになっていた。