社会人1年目、ポルシェを買う。
2017.11.21
第55話:あなたのポルシェに乗せてください!(笹本編集長の930 SC編)
どうやら視界がぼんやりと
彼らの第一声は「どうしたの⁈」だった。
「いやいや930乗っていくっていったじゃん!」
「違う! 違う違う! 顔!」
「え? なにさ」「いやいや鏡見て」
930の四角いドアミラーを覗くと
自分でもビックリするくらいまっ赤で、
しかもパンパンに腫れあがっていた。
熱中症の症状そのものだったのだ。
そこでアイスだの水だのマッサージだので
応急処置をしてもらい、あえなく解散。
たしかに帰ったときはふらふらだった。
膝も小刻みに震えていた。
気持ちだけは元気だったのに。
結局この日は、2ℓのスポーツドリンクと
1本の栄養ドリンク、Tシャツ2枚を消費した。
やっぱり、
クーラーがあったほうがいい、かも……。
ただ、ぼくには翌日、ミッションが控えていた。
それは伊豆スカイラインの往復だった。
ふっふっふ。
よほど疲れてしまったのか
気づいたら朝だった。
「伊豆スカ」でリベンジ
目覚めたら、体は羽のように軽く
きのうのことが嘘だったかのようにスッキリしていた。
真っ先にシャワーを浴びていざ出陣!
カバーをひっぺがしてロックキーをひねると、
あたかもドアの中でワイヤーが動いているような
ニュルンとした手応えが伝わる。
ドアを開けるとズチャっというし、
閉じるとパーンと室内に音がひびく。
これこれ!
いそいそと伊豆へむかった。
ただしこの日は濃霧。
雨が降っているわけではないのにボディはびっしょり。
でも走り進めるほどに視界はクリアになり、
路面もきれいに乾いていた。
知りたいのはコーナーの動きだった。
「空冷ポルシェはより一層RR感がする」
というようなことを読んだか聞いたかして
それが本当なのかを確かめたかった。
「クーレイの時代ですね!」
930を見た伊豆スカイライン料金所のおじさんも
興味津々の様子で話しかけてくれた。
いつもと違う体験だ!