社会人1年目、ポルシェを買う。

2018.05.20

第63話:社会人2年目で空冷ポルシェを買ったツワモノあらわる。

「クウレイ」という魔法

ズロッズロと音を発しながら
くだんのポルシェが辰巳PAに滑りこんできた。

ボディにはシミひとつない。
東雲(しののめ)のタワーマンションの光を
これでもかと、きらびやかに反射させていた。

ドアから降りてきたHくんは、
好青年という3文字が誰よりも似合っていた。
しゃいな笑顔を浮かべなから、
ぽつぽつと話し始めた。

聞くに、この空冷ポルシェの前は
先輩からもらったというBMW 3シリーズのワゴン
(18万km走っていたのだという)に
たいせつに乗っていたのだそうだ。

たまたま目に入ったこの空冷に
うまく言葉にならない運命を感じ
「そんなこんなで今、乗っています
 納車してからもまだそんなに乗っておらず
 というかそもそもヒール&トウくらいは
 できるようになりたいです。そんなレベルです」
と彼は、くしゃっとした笑顔で話してくれた。

ほどよくフェンダーがふくらみ、
内側のドアノブがベルトに置き換わっている。
シートも一見スポーティだけれど
だからといって大げさなものではない。

「MOMOのプロトティーポも、
小さいころから思い描いていた理想どおりです」
とのこと。

「音楽は聴くことをあきらめて、
 オリジナルのデッキに戻しました。
 でもこのエンジン音が聞ければ、
 社内の音楽は必要ないことがわかりました」

交代で助手席試乗会もした。

 
 

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