社会人1年目、ポルシェを買う。
2018.05.27
第64話:パナメーラに乗った日のこと。
音もせず、ただ前へ
虎ノ門ヒルズの地下駐車場にそれはあった。
グレードは「パナメーラ4 E-ハイブリッド」
四駆のプラグインハイブリッドという意味だ。
色はクレヨン。ペタッとした薄いグレーで、
昔のポルシェでいう「ドルフィングレー」に
もうちょっと白を混ぜたような色である。
これにプラグインハイブリッドであることを示す
黄緑色のキャリパーとエンブレムが組み合わさる。
淡いグレーと黄緑と日本の桜の花びらの色。
楽しい旅がはじまることを予感させた。
キーを捻って(といっても何も音はしない)
アクセルペダルを踏むと、またしても無音のまま
スーッと前へ進んだ。ファンがまわる音も
水平対向エンジンならではの排気干渉の音もない。
ただただ大きな体躯がすべるように前へ進んだ。
20kmと少し。自宅まで高速道路で帰った。
駐車場まで、一切エンジンが目覚めなかった。
・アメンボウのよう
・翼を閉じて風に身をまかせる鳥のよう
というのが、言葉の引き出しのない僕のたとえ。
べつのクルマ(マカン)だったけれど、
ジャーナリストの吉田拓生さんは
セッティングのあったヨットのように、
抵抗なくスッと進むと表現なさっていた。
僕は拓生さん表現を身をもって体感した。