社会人1年目、ポルシェを買う。
2018.05.27
第64話:パナメーラに乗った日のこと。
いざ、ワインディングへ
翌日、
笹本編集長のうちに集合して、北をめざした。
笹本編集長はひょいと運転席に座るやいなや
いきなりスポーツ・プラスへとダイヤルを回し
ともなってスポーツエグゾーストもONになった。
車体もぐっと低く構え、うしろの羽が開いた。
どのクルマがこんな勇ましい音をあげている?
と思ったら、パナメーラの音だった。
編集長がグーッとアクセルを踏むと
うしろからファァァんと甲高い音が聞こえた。
ぽんっとアクセルを離すと破裂音が響いた。
アウディでも体験したことのある
この2.9ℓV6ツインターボは、
現代の(いろいろと制限が厳しい)エンジン
のなかで名機だと僕はこっそり思っている。
3日目には「すみかわスノーパーク」という
スキー場までのワインディングを目指した。
撮影をおこなう際、一定区間を何往復もする。
動画撮影もおこなうから、往復の回数は増える。
「乗ってみるか?」と編集長に言われた。
助手席に乗ることを嫌がる編集長をなんとか説得し
(あのときの悪夢以来ですからね)
ドライバーズシートについて
最初のコーナーを目指した。
ややもすれば
車体が対向車線に
飛び出しそうになるヘアピンの連続。
最初はちょっと手前でブレーキ。
アクセルを穏やかにあけながらコーナーをでたが、
2、3コーナー目で、かんたんに要領がつかめた。
ブレーキングと操舵のタイミングも近づく。
あとはコーナー内側へ
グイグイとステアリングを切り込む。
あるところでリアの外側に
たっぷりとトラクションをかける。
「鼻先がコーナー内側に向いていれば
どんなことがあっても怖い展開にはならない」
「いまの脱出時のリアの荷重のかけ方なら
仮に滑ってもカウンターを当てればいいだけ」
だけ……? 最後のひとことは
ちょっとまだわからない世界だけど
以前と違って実感をもって理解できた。
これを何回か繰り返したところで
「やっと怖くなくなったね」と編集長はいった。
これほどの褒め言葉はあるだろうか!