社会人1年目、ポルシェを買う。
2019.01.19
第87話:ポルシェ930、ファースト・ライド。
まるで僕自身が無敵になったかのように
実際のところ、
編集⻑のガレージから
僕が住んでいるアパートまでは
クルマで5、6分しか掛からない。
「納車日は乗りすぎないに限る」というのは
納車の日にクラッシュをした先輩の言葉だが
そんな忠告は軽―く無視をして、
(先輩には黙っておこう……)
自宅とは逆方向の東名川崎ICに向かった。
ETCのゲートをくぐると東京方面へ。
左のコーナーの中心方向にノーズを向ける。
切った瞬間なめらかにクルマの向きが変わる。
(ようすは996と不思議なほど、まるで一緒)
アクセルを踏み込むと後ろからこれでもかと
車体が前に猛進する。音はとても乾いている。
不思議なくらい外の音は聞こえてこないのに
エンジンが室内にあるのではと錯覚するほど
ぎゅっと凝縮したような機械音がこだまする。
今まで乗ったことのあるクルマと全然違う!
ポルシェ930の濃度は圧倒的に高く、
クルマの運転をしているんだという実感が
あらゆる瞬間で手元、耳元、足元に伝わる。
1979年式だから、もう40年前のクルマだ。
それでも「ゆるさ」あるいは「くたびれ」とは
まったく無縁。フレッシュだ! そして速い!
実際の速度はそうでないのかもしれないけれど
こちこちの岩のような車体が、
ためらいなく夜の冷えた空気を切り刻んでいく。
まるで、僕自身が無敵になった気分になる。
辰⺒(たつみ)PAに少しだけ立ち寄った。
ボディが東雲の高層ビル群の光を跳ね返す。
ゆったりとクルマを眺めていたかったけれど
すぐにまた走りたくなる。
もっともっと走っていたいという気分を
どうにかこうにか抑え込んで、
自宅の駐車場へ向かったのだった。
自宅の駐車場に930を置いてクルマを降りる。
車体後方から、オイルだろうか、
香ばしく、男っぽい香りがしてくる。
これが自分のクルマになったのだなぁと思う。
いよいよ夢の空冷ポルシェライフが始まった。
きっとこれから、
楽なことばかりではないだろう。
しかし、自分のできる範囲で、
誠意をもってクルマに向き合い、
そしてたくさん学びたいと思った。
※今回も最後までご覧になってくださり、
ありがとうございます。
ところでクルマを降りたとたん、
体はクタクタに疲れていました。
朝起きると、なぜか腕も筋肉痛。
996ではそんなことなかったのに
なんでだろう。
今後とも、
皆さまの声をお聞かせください。
もちろん、なんでもないメールだって
お待ちしております。