社会人1年目、ポルシェを買う。

2020.11.03

【社会人1年目、ポルシェを買う。】第117話:どうやら赤ちゃんが生まれるらしい。

これを逃すと乗れないかも?

横浜市で野暮用を済ませて
高速道路に飛び乗ったのが夕方17時。
あとはもう、どんどん走るだけである。

去年の年末にはシャカヨン号(911 SC)で
一度九州まで帰省しているから(もう1年か)
アイポイントの高いSUVで帰省することは
信じられないと言われるかもしれないけれど
まったくもって苦だとは思わなかった。

トンネルに入ると、
真っ黒な塊が一瞬にして追いついてきた。
見慣れないクルマ。
「SRT」の文字がキラリと光った。
特徴的なテールライトが一瞬で遠のいた。

そのクルマは追い越しざまに一瞬速度を緩めた。
勘違いではないはずだ。それから
リアをグッと沈ませて轟音とともに消えた。
ダッジ・デュランゴSRT。
AMGのG 63もレンジのSVRもお呼びでない。
俺たちのためにある道だと言わんばかりの
同じくHEMIを積む者のけたたましい加速だった。

もちろん身重の妻を乗せるこちらは
その「誘い」にのることはなかったけれど、
アクセルを半ばまで踏んだだけでも
このアスファルトを走る誰にも負けないと思わせる
狂気にちかい加速だった。

ゆっくり走ってもいい。
アクセルを数ミリ動かせば
まるで地面が後ろ側に動いてくれているかのように
ゆうゆうと歩を進める。
「こんな過剰なの必要ない」
なんて言ったのは誰だろう?

ここ最近のレネゲードからラングラーまで通ずる
「いやなところがまったくない」というのも
グランドチェロキー・トラックホークも同じだ。

なんとなくイメージしがちな、
山っぽい、粗っぽい、ぶかぶかしたところはなく
踏めば踏むだけ、切れば切るだけ
なめらかに態度を変える。

ほどよい「山っぽさ」だけではクルマは売れず、
こうして気持ちよく走らせるという最低限のことが
このクルマにはできるからこそ(意外とできないクルマも多い)、1日にジープを何台も何台も見るのだと思った。

記事に関わった人々

  • 上野太朗

    Taro Ueno

    1991年生まれ。親が買ってくれた玩具はミニカー、ゲームはレース系、書籍は自動車関連、週末は父のサーキット走行のタイム計測というエリート・コース(?)を歩む。学生時代はボルボ940→アルファ・スパイダー(916)→トヨタ86→アルファ156→マツダ・ロードスター(NC)→VWゴルフGTIにありったけのお金を溶かす。ある日突然、編集長から「遊びにこない?」の電話。現職に至る。
 
 

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