クルマ漬けの毎日から

2020.12.30

クロプリー編集長の目を通して見た、この1年のハイライトをお届けします。2020年は異例の年となりましたが、すべてが異例だったわけではないと、クロプリー編集長は語っています。まずは6月までを振り返ります。

【クロプリー編集長コラム】取材を通して見た「2020年」 前編

もくじ

2020年 すべてが「異例」ではなかった
コロナ禍で迎えた春

translation:Kaoru Kojima(小島 薫)

2020年 すべてが「異例」ではなかった

「異例の年」という言葉を、今年は何度も聞いてきた。皆さんはもうこの言葉を聞き飽きているのではないだろうか?

私はうんざりしている。それに、自分のスマートフォンの中身を見てこの1年を振り返ってみると、すべてが「異例の年」だったとは言い切れない。

3月下旬にロックダウンとなったイギリス。外出制限が緩和された後、自動車業界では6月頃から発表会などのイベントが、少しずつ慎重に再開した。

たしかに2020年は、イギリスのAUTOCAR編集部も、例年とはまったく異なる状況となった。

だが、何としてもAUTOCAR(英国で刊行されている週刊誌)を出版し、またウェブサイトを常に更新するという信念のもと、われわれは多忙な毎日を送り、しかも、その多くの仕事を楽しく行なうことができた。

このように活動できたのは、自動車業界で働く機知に富む人々が情報の発信を続け、インタビューの場を設け、例年とほぼ同じように試乗車を提供してくれたおかげである。ここに私の目を通して見た、2020年のハイライトをお届けしたい。

1月 ベントレー・ミュルザンヌ

2019年のクリスマス休暇から年始にかけて、このベントレー・ミュルザンヌに乗って過ごした(クリスマスにちなんで、「ベツレヘムの星」とミュルザンヌを一緒に撮ろうとしたら、このような写真になってしまった)。

この時点でミュルザンヌの生産は、残すところあと数か月に迫っていた。

まさに特別で、伝統的スタイルのベントレー・ミュルザンヌ。運転してみて、やはり素晴らしいクルマだと実感した。

最新のフライングスパーのほうが、ほぼどの評価項目でも優れているという見方は、たとえそれが正しいとしても、思いやりにかけるというものだろう。

1月 新型ディフェンダー

ランドローバーのデザイン責任者、ジェリー・マクガバンは、(本人に聞いてみたわけではないが)ほぼ間違いなく、彼の輝かしい実績の頂点となる仕事をやり遂げた。

ロンドンのデザイン・ミュージアムというデザインの殿堂で、新型ディフェンダーを発表したのだ。

ディフェンダーのことをよく知る人たちからすれば、後継モデルは誕生しなくてもよいのではないかと、大いに懸念されていた。しかし、新型はあらゆる方面の人々から絶賛された。

2月 シトロエン・ベルランゴ

このまばゆいばかりの新車、シトロエン・ベルランゴ(1.2Lガソリン・ターボ/AT仕様)を借りた。

そして、すぐにリサイクルセンターへ不用品を持って出かけた。

我が家で17年間所有している古いベルランゴは長年ここへ通い、いかに役に立つクルマであるかを証明してきたからだ。決して悪気があって、新車のベルランゴでゴミの集積所へ行ったのではない。

ところで、新型ベルランゴの乗り心地は、レクサスに匹敵する(レクサスのほうがわずかに優っているが)。

リクライニングできるほどのゆとりはないものの、大人7人が十分なスペースで快適に座ることができる。

さらにその状態で、高速道路を効率の良い巡航スピードで走ることも可能だ。ベルランゴの存在はあまり知られていないかもしれないが、まさに秘密兵器にほかならない。

2月 フォード・レンジャー・ラプター

フォード・レンジャー・ラプターが登場した時、私はちょっとした興奮状態に陥った。短距離の試乗をしたところ、この性能の高いピックアップは、ステアリングフィールも、操縦性も、乗り心地も、すべて世間で思われているよりも優秀だとわかったからだ。

ほんのつかの間ではあったが、ラプターを手に入れようと本気で考えた。

だがすぐに、高さ制限と全長からすると、日常生活が容易ではなくなるだろうと思った。それに値段も高いし、エンジンはディーゼルだ。

ハイブリッドのV6のほうが私の好みだ(フォードには、このエンジンがある)。もしくは、この時代に大きな声では言えないが、V8のほうが好きだ。

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