クルマ漬けの毎日から
2021.03.16
ゴードン・マレーは、サーキット専用モデルの「T50sニキ・ラウダ」を2月にお披露目しました。このクルマが元F1世界チャンピオンの名を持つ理由は、1978年のGPカー「ブラバムBT46B」と関係があります。
【クロプリー編集長コラム】ゴードン・マレー、親友ニキ・ラウダとの思い出を語る
もくじ
ー マレーとラウダ ブラバムの同僚
ー 驚異のBT46B 予想外の勝利!
マレーとラウダ ブラバムの同僚
ゴードン・マレーにオンラインで取材をし、最近お披露目された「T50sニキ・ラウダ」のネーミングについて話を聞いた。
このクルマは、マレーが手掛けた軽量のサーキット走行専用モデルで、V12エンジンを搭載する「ファンカー」である。
話は遡るが、1978年のスウェーデンGPで、ニキ・ラウダはマレーが手掛けた「ブラバムBT46B」で優勝している。
しかしこれは、革新的なBT46Bの最初で最後の勝利となった。
ブラバムBT46Bのテールエンドに取り付けられたファンは、車体下側のエアを吸い出して効率よくダウンフォースを発生させ、コーナリングでもライバルのロータスよりも速く走った。当時のロータスは、いわゆる「グランド・エフェクトカー」である。
ブラバムBT46Bは勝利を挙げたものの、この後は出走禁止とされた。だが、ニキ・ラウダとゴードン・マレーは生涯の友となる(ブラバムが禁止措置を受け入れたのは、チームオーナーだったバーニー・エクレストンが、ライバルチームを刺激したくなかったからだという。エクレストンがまさに、F1界のボスとして足場を固めようとしていた時期だったのだ)。
驚異のBT46B 予想外の勝利!
マレーは当時を振り返って、次のように話した。
「ブラバムBT46Bの速さは驚異的でした。でも同時に、とても手に負えないマシンでもあったのです。ニキはいつも、そのことを率直に口にしていました。スウェーデンGPの出走前にも、私にこう言ったのです。『ゴードン、もし今日勝てたら、あなたは“カーデザインの天才”と呼ばれるでしょうね』と」
「しかし、BT46Bは完走できないだろうと、彼も私も思っていました。だから、勝利を挙げた瞬間は、じつに衝撃的でした。興奮して大騒ぎになってしまい、その時はニキとはあまり話ができませんでした。でも、後で彼が電話をくれて、私にこう言ったのです。『今や文字通り天才ですね、あなたは』とね」
ゴードン・マレーの亡き親友への想いがこめられたT50sニキ・ラウダ。いつか試乗したいと思いながら、オンラインの取材を終えた。