社会人1年目、ポルシェを買う。
2021.04.12
早起きして、シャカヨン号(1979年型ポルシェ 911SC)に乗ってドライブに出かけました。
【社会人1年目、ポルシェを買う。】第126話:こんなときにこそ、できること。
安全で、ちょっとアツく、しかしゆるく
朝、3時。そっとベッドから抜けだす。
ドアをゆっくり開けて忍び足で家を滑りだす。
駐車パレットを上げると、
ほのかな、しかし香ばしいオイルの香り。
マルっと目を見開いたシャカヨン号が現れる。
クシュシュ……ジャジャンッ!
気持ちよくエンジンがかかった。
換えたばかりのバッテリーのおかげだ。
おやすみの近隣住民を起こすわけにはいかない。
そろそろと走りだし、暖気しつつ出発しよう。
暖まるまで、ギアの挿入は、よりていねいに。
回転数だって最低限だ。
信号のすくない道を通り、幹線道路へ。
車内だけれど吐息は真っ白に舞う。
コンビニには配送のトラック。
街頭の下で凍えるベンチ。
空を見上げるとまだ星。
東名川崎インターチェンジをくぐる。
冬は完全にエンジンが暖まらないけれど
それでも入りにくかったシフトはほぐれ、なじむ。
ちょっとだけ回転数をあげる。
ザラザラと粒の大きかったエンジン音は
緻密でまとまりをもった音色に転じ、車内に響く。
それでもいちばん右車線には出ない。
あくまで左か中央車線で後続車をやり過ごす。
港北パーキングエリア。出口のいちばん近く。
ミラーと耳で高速道路を走るクルマを注視する。
低く黄色い一対の丸いヘッドライトが通り過ぎる。
そのあとに真っ白いライト。クーペボディ。
そしておよそクルマの形からは想像できない
ドロドロとしたV8サウンドが響くSUVクーペ。
ぼくもギアを1速にいれて追いかける。
そのまま4台つらなり、
トウメイ→オダアツ→小田原西IC。
ゲートをくぐると一般道に。
それからちょっと走ると、
箱根ターンパイクの入り口である。
それぞれがほどよい距離をあけて、
おのおのの流儀でコーナーをやりすごす。
直線、右コーナー、左コーナー……。
見上げると、雲の中にたたずむ、
大観山展望台だ。
降りる、ようやく顔を合わせる。
1人はよく知っている、同じ業界のIさんだ。
あと2名はIさんの同級生と小学校のパパ友(笑)
ナローボディの911(1976年式)と
日産フェアレディZニスモ、
そしてBMW X6 M(3.2カレラの代役)。
あたりは霧に包まれ、キンキンに冷えた駐車場で
「いやぁそれにしても寒い!」なんて笑いながら
日が昇るまでたわいもないクルマ談義をしたあと
椿ライン→三国峠→御殿場箱根線と走り抜け、
そのまま東名高速に御殿場から戻り
おのおのの方向に向かって分かれていった。
真夜中から日の出までの一瞬のできごと。
物理的にも精神的にもほどよい距離感で
それぞれの好みのペースで楽しみ
短い時間で解散した「だけ」
といえばそのとおりだけれど
安全で、ちょっとアツく、しかしゆるく
ピュアにクルマを楽しめた時間だった。
※今回も最後までご覧になってくださり、ありがとうございます。
カラッとした関係で、
それぞれの楽しみを満たす。
自分が楽しんだもの勝ち? ですね。
お声掛けしてくれたIさん、感謝です。
今後とも、[email protected] まで、
皆さまの声をお聞かせください。
もちろん、なんでもないメールだって
お待ちしております。