クルマ漬けの毎日から

2022.02.07

イギリスで19世紀末に造られた古い鉄道トンネルが、エアロダイナミクスの試験場として再利用されることになりました。

【クロプリー編集長コラム】古い鉄道トンネル、最先端のエアロダイナミクス試験場に!

もくじ

再利用 ビクトリア女王時代のトンネル
ロータス88 オープニングに出走

translation:Kaoru Kojima(小島 薫)

再利用 ビクトリア女王時代のトンネル

トンネルを見て感激したことがあるだろうか?

私はそういう経験をしたことがなかったので、ケーツビー・トンネルを訪ねることで気持ちが高ぶるとは、まったく予想していなかった。

ケーツビー・トンネルは、イングランド中部のダベントリーという町から数km南にある。長さ2.7kmのこのトンネルは、ビクトリア女王時代(1837-1901)に複線鉄道のトンネルとして造られた。

だが、このほど別の目的で使われることになり、車両のエアロダイナミクスの試験施設へと、費用をかけて生まれ変わった。

ケーツビー・トンネルを実際に訪ねてみれば、すぐにその可能性を感じることができる。

ここは安全が確保されているし、機密が守られる空間でもある。温度管理も行なわれている。

それに、路面は完璧にフラットでストレート。最新のターマック舗装が施されており、時速200mile(時速321km)までのハイスピードで繰り返し走行することも可能だ。横風も発生しない。

それに風洞での固定された車両のテスト結果では、普通は補正が必要になるが、それもここでは必要ない。そういうデメリットは、このトンネルでは生じないのだ。

ロータス88 オープニングに出走

多くの有名なエンジニアたちが、生まれ変わったケーツビー・トンネルのオープニングに姿を見せたが、それもうなずける。

そのオープニングセレモニーは、イギリスのモータースポーツの2人のヒーローによって執り行なわれた。

1人は、コスワースの共同創業者のマイク・コスティン。もう1人は、ロータスのF1で、エアロダイナミクスのグランド・エフェクト(地面効果)を発見し、完成させたピーター・ライトである。

さらに、ツインシャシーのF1カー「ロータス88」も登場し、爆音を轟かせながらトンネルを駆け抜けた。

即座に私の頭のなかは、ロードカーの試験への期待でいっぱいになった。エアロダイナミクスという点で、ポルシェはマクラーレンと比較して、どういう結果になるのだろうか?

それに、身近なEVになりつつあるフォルクスワーゲンID.3は、テスラ・モデル3と比較してどうなのだろうか?

近い将来、ケーツビー・トンネルのエンジニアたちが、解明してくれることを期待したい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。

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