クルマ漬けの毎日から

2023.01.28

かつてロンドンのケンジントンには、ブリストルの唯一のショールームがありました。ブリストルとそのショールームを長年守り続けたのは、トニー・クルック(2014年没)という人物でした。

懐かしい! ブリストルのケンジントン・ショールーム【クロプリー編集長コラム】

もくじ

半世紀 ブリストルを守ったレジェンド
「独特の個性」 いまもこの地に

translation:Kaoru Kojima(小島 薫)

半世紀 ブリストルを守ったレジェンド

ロンドンのケンジントンを歩いていた時、かつてブリストルのショールームだったところの前を通った(オリンピア展示場の近く)。

いまはブリストルの看板はなくなり、インディアン・モーターサイクルというバイク販売店になっていることに気づき、思わずはっとした。

半世紀以上ものあいだブリストルのために献身的に働き、このブランドを守り続け、またかつてはブリストル社のオーナーの1人でもあったトニー・クルック(1920 – 2014)。

ブリストル取材のために彼を訪ねた場所、それがこのケンジントン・ショールームだった。

1952年のブリティッシュ・グランプリでフレイザー・ナッシュを駆る、若き日のトニー・クルック。かつてはレーシングドライバーだった。

長年、クルックはヒルトンホテルからこのショールームを守ろうと、とても苦労していた。というのも、ヒルトンはブリストルのショールームをほぼ全方向から取り囲んでいたから。

「独特の個性」 いまもこの地に

クルックにとってはまったく不本意、かつ残念なことであったが、2007年に彼は引退を余儀なくされ、このショールームを去った。

かつてブリストルの名所として観光客にも有名だったケンジントン・ショールームは、現在は高価で独特の個性を持つ、パフォーマンス重視のバイクをエンスージァスト向けに販売する場として使われている。

このことをクルックが知ったら、どう思っただろうか? 少なくとも、少しは喜んだにちがいない。ブリストルも独特の個性を持つクルマだったから。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。

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