クルマ漬けの毎日から
2024.05.21
1979年に製造され、1980年に発表されたワンオフのコンセプトカー「アストン マーティン・ブルドッグ」に44年振りに試乗しました。
44年振りに試乗! アストン マーティン・ブルドッグ【クロプリー編集長コラム】
もくじ
ー 1980年 ブルドッグ発表の背景
ー 抜群の操縦安定性
ー ブルドッグとヴェイロンの共通点
1980年 ブルドッグ発表の背景
早朝に自宅を出発し、そわそわと落ち着かない気分のなか、シュロップシャーのブリッジノース(イングランド中西部)にあるクラシック・モーターカーズへ向かった。クラシック・モーターカーズは、イギリスのレストア業者のなかでも、もっとも素晴らしい会社の1つ。
ここでは、ウィリアム・タウンズがデザインした有名なコンセプトカーで、おそらく世界初のハイパーカーといえる「アストン マーティン・ブルドッグ」を保守管理している。
昨年ブルドッグはスコットランドにある元NATO基地で、遅まきながら205mph(約330km/h)を記録した。というのも、ブルドッグは最高速200mph(約322km/h)の偉業を成し遂げるために44年前に誕生したからだ。
当時、アストンは年間60台の製造販売に苦労していた。意欲と実力があることを示すと同時に、世間の注目を集める必要がアストンにはあったのだ。じつは、私は世界で最初にブルドッグのハンドルを握ったジャーナリスト。この日、クラシック・モーターカーズを訪ねたのは、44年前の特別な日を再び体験するためだった。
抜群の操縦安定性
44年前もそうだったが、ブルドッグの車内に乗り込むのはなかなか大変だ。だが、いったん運転席に座れば、ドライビングポジションはロジカルで、心地よく、安全に運転できると感じる。
エンジンは瞬時に始動し、轟音を響かせる(キャビンには防音は施されていない)。さらに、タービンの無制限の金属音とウェイストゲートのけたたましい音が重なる。600bhpのパフォーマンスはやはり桁外れだ。また操作系には「時代」が感じられる(重たいクラッチ、ストロークが大きいアクセル、ドッグレッグ式シフトパターンのZF製トランスミッション)。
だが、ブレーキは現代的でパワフルだ。ブルドッグは運転しやすく、コーナリングも優秀。しかし、なんといっても最大の長所は、操縦安定性が素晴らしいこと。
こういう場合、話の中心はダイナミクスになりがちであるが、私はブルドッグをデザインした故ウィリアム・タウンズのことを考えていた。シンプルで強い印象を与えるデザインは、今日では当時よりもずっとよく理解される。タウンズにそう伝えられたら、どんなによかっただろう。