クルマ漬けの毎日から

2024.12.27

スティーブ・クロプリー(英国版編集長)が取材を通して見た2024年を、写真とともに振り返ります。後編では、7月から12月までをお届けします。

取材を通して見た「2024年」後編【クロプリー編集長コラム】

もくじ

さあ、2024年の後半を一緒に見ていこう
今年もありがとうございました

さあ、2024年の後半を一緒に見ていこう

translation:Kaoru Kojima(小島 薫)

7月 シェルズリーは良いところ
ヒルクライムのシェルズリー・ウォルシュ(イングランド西部のウスター近郊)へ行き、素晴らしい夏の1日を過ごした。この日シェルズリーでは、モータースポーツ界で成功を収めているプロドライブの40周年を祝うイベントが開催された。

近年、たとえばシルバーストーンのような場所での人混み(および観客整理)に私たちはある意味慣れてしまったので、シェルズリーの居心地の良さはまるで極楽のように思えるかもしれない。観客席から見るヒルクライムコースの眺めはじつに素晴らしく、また見たことのない面白いクルマも登場する。何か興味深いことが次々と起きるし、パドックにも気軽に行け、周囲の人ともすぐに友達になれる。そのうえ駐車場も使いやすく、全体的にスペースにゆとりがあり、参加費などもお手頃価格。

少し検索してみれば、こういう居心地の良い場所や集まりは、イギリスのあちこちで見つけることができる。

8月 フォード・レンジャー・ラプター
この夏、我が家に大きな出来事が起きた。派手なデカール付き「コードオレンジ」のフォード・レンジャー・ラプターを購入したのだ。このラプターは、同僚のマット・プライアが長期テストしていた個体。ラプターを買って以来、同世代の友人に会うたびに、なぜ年甲斐もなくラプターを選んだのかをずっと説明しつづけている。

とんでもなく大型で、見た目にもインパクトがあるこのピックアップを私はとても気に入っているが、運転していてあっと驚かされることがよくあり、このこともラプターを気に入っている理由なのだ。

同僚のプライアが1万3000mile(約2万920km)テスト走行した私のラプターは、まもなく2万mile(約3万2186km)になろうとしている。いまは手に入れた当初よりもさらに満足しているが、なんといっても嬉しいのは、妻もラプターが気に入っていること。彼女の判断はいつも正しいから。

9月 ティレルF1チームの遺産
この建物は、グッドウッドの最新の名案の1つ。グッドウッドはかつてのティレルF1チームが使っていた古いガレージを手に入れ、有名なグッドウッド・モーターサーキットに移築したのだ。

9月恒例の「グッドウッド・リバイバル」の初日の朝、(大雨のなかで)オープニングセレモニーが行なわれた。目的地に早めに到着するという私のいつもの習慣から、大勢の人たちがやって来る前にガレージのなかを見ることができた。

現代のF1からすると、思わず笑ってしまうほど素朴で小さなガレージ。だが、このなかで数台のF1カーや壁に掛かっているツールを見て回り、その雰囲気を実際に体験してみると、ティレルが成功を収めるうえで、このガレージが大きな役割を果たしたことがわかる。

10月 イアン・カラムの新型EV
イアン・カラムがデザインしたEVのオフロードのコンセプトが、2024年のビスター・スクランブルの最終回に展示された(ビスター・ヘリテージ主催)。このクルマを自分の目で見られたのはじつに嬉しいことだった。まったくの新型車は、直接自分の目で見て評価したり、理解したりするのが一番良いのだ。

私の考えでは、「カラム・スカイ」は2つの点で成功している。まず小型なのがいい(イギリスで「スーパーミニ」と呼ばれるVWポロ、アウディA1、プジョー208、ホンダ・フィットなどのセグメントよりも少し大きいだけ)。またBEVであり、シートが高い位置にあり、端正で、未来的デザインなので、多くのコンセプトカーよりもずっとユーザーにとって妥当性がある。

11月 ジャガーの新コンセプトカー
ジャガー・ランドローバーは報道解禁日を設けて、ジャガーのコンセプトカー「タイプ00」を私たちメディアに見せた。それは2回分のストーリーになっていた。最初はブランド再構築のこと、次に大きな話題を呼んだEVについてだった。

私は「どれくらいで情報が漏れるだろうか?」と思わずにはいられなかった。ブランド再構築については、スケジュールを守って報道された。だがEVのコンセプトカーについては、24時間前にリークされた(最近としてはまずまず)。非常に興味深かったのは、ジャーナリストたちはタイプ00コンセプトを好意的に見ていたが、それを上回る勢いで一般の人たちが、実際に感じている以上に否定的な反応を示したこと。

私自身は、もし適切なエンジニアリングと生産が順調にいけば(この2つは大きな仕事)、タイプ00は驚くべきクルマになり、成功する可能性があるとみている。

12月 自動車ジャーナリズム専攻の大学院生
自動車ジャーナリズムの未来はいかに? コベントリー大学の修士課程の学生たちとの懇親会に出席したあとで、その未来は「大いに期待できる」と私は思った。コベントリーは世界で唯一、自動車ジャーナリズムの専門コースを持つ大学。私の仕事は、学生たちに最高のアドバイスをすること。

いつも同じことを言っているが、熱心に取り組み、読者のために仕事をし、他の人のことは忘れること。だが、熱心で賢い学生たちはこのことをすでに心得ている。おそらくこのコースの責任者であるアンドリュー・ノックスから学んだのであろう。学生たちの前途を願ったことが、私の今年最後の重要な仕事となった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
 
 

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