ルノー・スポールの歴史を締めくくる至高の1台 メガーヌR.S.ウルティムこそが「究極」の万能選手だ

公開 : 2024.01.26 17:05

安心して攻め込めるロードホールディング性能 これがラストチャンス

しかも、前輪駆動なのにフロントヘビーな印象が薄く、むしろ「フロントエンジン・リアドライブではないか?」と疑いたくなるほど前後バランスの印象は良好。おかげで、前輪だけでなく後輪も徹頭徹尾、路面をグリップし続けてくれる。

そして、ここで改めて感心させられるのがロードホールディングの良好なことである。

前述のとおり、メガーヌR.S.ウルティムはスポーツモデルにしてはサスペンションストロークが長め。このメリットを生かして、多少ボディが浮き上がりそうになる状態でも、4本のタイヤは執拗に路面を捉え続けてくれる。

おかげで一定のコーナリングラインを比較的、容易に保つことができるのだが、そのロードホールディング性能は恐ろしく高い。これほど高いアベレージスピードを保って、しかも安心してワインディングロードを攻められるクルマは、スーパースポーツカーを含め、滅多にないといってもいいくらいだ。

そこで「メガーヌR.S.ウルティムだったら、きっとサーキット走行も存分に楽しめるはず」なんてことを考えながら帰り道の一般道を走っていたら、行きと違って乗り心地の印象がぐんとよくなったように思えたのは、きっと、ワインディングロードでのハンドリングがあまりに優れていたからに違いない。

それにしても、これだけ熟成され尽くしたメガーヌR.S.が、このウルティムを最後に市場から消えてしまうのは残念でならない。いや、メガーヌR.S.だけでなく、その生みの親であるルノー・スポールまでもが活動を終了し、今後は電動モデルの開発に打ち込むことになるというのだから、世の中の急速な変化にはあ然とするばかりである。

ちなみにフランス語の「ウルティム」には、「究極」のほかに「最後の」という意味があるそうだ。

ルノー メガーヌR.S.ウルティム 公式サイトをみる

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 編集

    香野早汰

    Hayata Kono

    1997年東京生まれ。母が仕事の往復で運転するクルマの助手席で幼少期のほとんどを過ごす。クルマ選びの決め手は速さや音よりも造形と乗り心地。それゆえ同世代の理解者に恵まれないのが悩み。2023年、クルマにまつわる仕事を探すも見つからず。思いもしない偶然が重なりAUTOCAR編集部に出会う。翌日に笹本編集長の面接。「明日から来なさい」「え!」。若さと積極性を武器に、日々勉強中。

ルノー・メガーヌR.S.ウルティムの走りを解説

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