富士の麓で本領発揮! アベンジャーの走破性は期待以上

公開 : 2024.11.01 12:30

ACCはまるで大排気量車? な余裕あり

高速道路を走っていて感心させられたのは操作系のわかりやすさだった。センターコンソール付近に並んだ物理スイッチも大きくて分かりやすい。インフォテイメントも横長(10.25インチ)のタッチパネルモニターに大きく(深い階層ではなく)わかりやすく機能が表示されており、直感的に扱うことができた。

最近はハザードやミラー調整までモニター内で操作するクルマが増えているが、それらとは対照的。雪などのタフな状況下で乗り込んですぐにヒーターを作動させたい! といったジープらしい使い方に対応した作りになっている、ということなのだろう。

ACCに関してもステアリング上、向かって左側のスイッチ群で直感的に扱うことができた。混みあった状況で走行した前回はStop & Go機能の確かな仕上がりをチェックできたが、今回はACC+レーンキープアシストもきちんと作り込まれていることを実感できた。

ダウンサイジングのターボ・エンジンを搭載した小型車の場合、アップダウンが続く高速道路でACCを使うと加減速が少々雑になることもある。ところがアベンジャーは、まるで大排気量車のような滑らかなスピードコントロールに終始していた。ここでもBEVの特性が動的質感をしっかりと高めていたのだ。

走破性は“FF”より“BEV”の部分に注目

今回は特にセレクテレイン™システムとHDC(ヒルディセントコントロール)の性能を確認するため、富士山近辺の林道やその脇道に入り込んで試乗を行った。センターコンソールにあるスイッチで操るセレクテレイン™システムは6つのモードがある。ノーマルとエコとスポーツはアスファルト路面の普段使い、対するスノー、マッド、サンドがオフロード用となっている。

もちろんまだ路面に雪などないし、最低地上高(200mm)やアプローチアングル(20度)とデパーチャーアングル(32度)を試すほどの悪路も今回はなかった。それでもジープがなぜアベンジャーにセレクテレイン™システムを搭載しようと考えたのか、その理由はよくわかった。

アベンジャーはFFだし本格オフローダーのような副変速機も備えていない。それでもジワッと路面を掴むように走り出して、慎重なスロットルワークに応えてくれたのだ。まるで副変速機でLOWギアを選んだ時のように! 

AWDモデルのメリットは駆動力を4輪に分配し路面を優しく掻ける点にある。特に重要なのは滑りやすい路面における最初の動き出しだ。ここで滑ってしまうか、ジワッと前に出られるかで優劣が決まってしまうのだ。 

モーターの回転がダイレクトに前輪を回すアベンジャーは、優れたロードホールディングと推進力によってラフロードを意のままに走破して見せたのだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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