【カギは水と温度】ダンロップ・シンクロウェザーの実力を検証：座学編 性質が変化するアクティブトレッド
公開 : 2025.02.14 14:00
水と温度をスイッチとして性質を変える、斬新なコンパウンドを採用して話題の二刀流タイヤ、ダンロップ・シンクロウェザー。オールシーズンタイヤの常識を覆す画期的なメカニズムを、タイヤの達人・斎藤聡が詳しく解説します。
もくじ
常識破りの二刀流コンパウンド
いま巷をざわつかせているタイヤがあります。ダンロップから発売されたオールシーズンタイヤ、シンクロウェザーです。
オールシーズンタイヤは、夏のドライ路面から冬の多少の降雪時まで、１年を通して履いていられる便利なタイヤとして、近年急速に注目度が高まっているカテゴリーですが、唯一のウイークポイントは、氷上のグリップ性能が高くないこと。夏の酷暑の中で剛性（弾性）を保ちながら、冬のグリップに必要な柔軟性を両立するのは、ゴムの特性上極めて難しいから、それは仕方のないこと……というのが、これまでの常識でした。
シンクロウェザーは、そんな常識をあっさりとひっくり返し、夏場にサマータイヤと同等のしっかりした走りをみせながら、氷上グリップ性能まで獲得してしまったのです。
なぜ、そんなことが可能となったのか。ここでは、夏の剛性と冬の柔軟性を両立したゴムコンパウンドの秘密について、深掘りしつつ解説してみたいと思います。
シンクロウェザーを特徴づけているのが、アクティブトレッドという、トレッドコンパウンド（以下コンパウンド）の性質を変化させるコア技術です。
アクティブトレッドの機能はふたつあります。まずは水をスイッチにして、コンパウンドを硬くしたり柔らかくしたりするもの。
サラッと書いてしまいましたが、この技術は大発明と呼んでも過言ではありません。これまでもスタッドレスタイヤには、トレッドブロック表面のポリマー（≒ゴム）が切れて柔らかくなるというものはありましたが、当然ながらそれは柔らかくなりっぱなし。トレッド面が摩耗しながら、その都度、表面がソフトなゴムへと変わっていくというものでした。
一方、アクティブトレッドは、水がスイッチとなって変化を引き起こします。水に触れるとコンパウンドが柔らかくなり、乾くと硬くなるのです。これを何度も繰り返すことができるので、ドライ路面では硬く（≒弾性が高く）、ウエット路面では柔らかくなります。
なぜそんなことができるのか、詳しく説明していきましょう。
