マクラーレン570Sクーペ/540Cクーペ
公開 : 2015.06.04 22:00
パワーユニット
570Sならびに540Cが搭載するのは、M838TEと名付けられた3799ccのV8ツイン・ターボ・ユニット。
570Sは、最高出力:570ps/7400rpm、最大トルク:61.2kg-m/5000-6500rpm、0-100km/hタイム3.2秒、0-200km/hタイム9.5秒、最高速度328km/h、出力重量比434ps/トン。
一方の540Cは、最高出力:540ps/7500rpm、最大トルク:55.0kg-m/3500-6500rpm、0-100km/hタイム3.5秒、0-200km/hタイム10.5秒、最高速度320km/h、出力重量比412ps/トンだ。
用いられるパーツの30%がこのスポーツ・シリーズのための専用設計とのことだ。
パワートレインの効率向上を目論んだその他の改良点としては、カムシャフトの位相を60°制御できる新たなコントローラーが挙げられる。エンジン内部のイナーシャを減少させるとともに、制御範囲の大きなこの機構は、CO2排出量の削減とエンジン・レスポンスの改善につながる。また、バキューム装置を省略した結果、2.5kgの軽量化とメカニズムの簡略化に成功している。
またひとつ上のシリーズであるスーパー・シリーズと技術的な共通点が多いこのユニットは、フォーミュラ1で用いられているのと同じドライサンプやシングルプレーン・クランクシャフトを採用することで、エンジンの搭載位置を可能なかぎり低くして重心高を下げ、ハンドリングとアジリティを高めることにも一役買っている。
スポーツ・シリーズに採用された新しい等長エグゾースト・マニフォールドは、キャスティングで作られるステンレス製マウント部とハイドロフォームで成型されるステンレス製チューブで構成される。よって排ガスの流れが最適化されるため、安定的かつ均一な背圧を作り出してパフォーマンスの向上を図れると同時に、特徴的なエグゾースト・ノートを生みだせるようになった。
組み合わされるトランスミッションは7速シームレスシフト・ギアボックス(SSG)でありストップ・スタート・システムを初めて採用した点も重要だ。これにより570Sと540Cともに燃料消費率は9.0km/ℓ(公表値)をマークしている。
このSSGは、ノーマル/スポーツ/トラックの各モードが用意される。ギアボックスのセッティングはエンジンの回転数の変化に注目した新しいコントローラー・ストラテジーを導入することで、より速いシフトを実現した。
650Sのアップ・シフト用として初めて公開されたシリンダー・カット・テクノロジーの改良版がスポーツ・シリーズに採用されたことも特筆すべく点だろう。これにより最大で従来の10倍の速さでエンジン・イグニッションをコントロールするとともに、アップ・シフトとダウン・シフトの両方で作動するようになった。
‘イナーシャ・プッシュ’ なる技術を初採用したのもスポーツ・シリーズの特徴。トラック・モードを選び、エンジン回転数が5000rpm以上かつスロットル開度が60%以上になったとき、システムはフライホイールのイナーシャを活用し、次のギアに接続されるときに勢いよくトルクを伝える。650Sにも採用したこの手法はエンジン回転数が低下する前に次のギアにパワーを伝えるもので、結果的にアップ・シフトの際にも加速度の落ち込みが少ない、継続的かつ強力な加速感を味わうことができる。