アストン マーティンの歴史をめぐる旅:DB6からDBXまで(前編)
公開 : 2017.04.23 07:00
まずはV12ヴァンテージで旅路に
そんなわけで、7時までにはロンドンを脱出し、アストン・ヒルの古く、泥にまみれたヒルクライム・コースを目指していた。
バッキンガムシャーのアストン・クリントン村から程近く、幹線道路のA41から逸れてすぐだ。言うまでもなく、創業者のライオネル・マーティンがシンガーと自製のマシーンを駆り、アマチュア・レーサーとして名を馳せ、社名の由来となった地である。
今やマウンテンバイク乗りのメッカとなったアストン・ヒルだが、鬱蒼たる森の木漏れ日降り注ぐ光景は、歴史の趣を感じさせる。
そこに辿り着くまでには、自分が乗るV12ヴァンキッシュが素晴らしいクルマであることを再確認していた。これは前期の466ps仕様で、527psに強化されたヴァンキッシュSではなく、トランスミッションはオーナーたちから6段MTへの換装を望む声が高まっている、パドルシフトの2ペダルMTだ。
2001年登場という車齢ゆえ、新型車に乗り慣れているとやや怖さを覚えることがあるかもしれないが、それはこのクルマの絶対的な魅力を損なうものではない。
エンジンはスムースでフレキシブル、しかもサウンドは絶品だ。最近ありがちな排気切り替えバルブや人工音の添加装置に邪魔されない、想像しうるベストなV12エグゾースト・ノートを聴かせてくれる。個人的には、走りの勢いも十分すぎるほどだ。常に、トルクにあふれている。
創業者のライオネルも100年前に嗅いだであろう春風に半時間ほども浸ったあと、われわれは北へと舵を切った。アストンが2007年まで、戦後50年以上に渡り生産の本拠地としていたニューポート・パグネルを目指して。