アストン マーティンの歴史をめぐる旅:DB6からDBXまで(後編)
公開 : 2017.04.23 12:00
DB9からDB11へ
次に乗り込んだDB11は、アストンが所有する初期生産車のうちの1台で、開発のためにさんざんしごかれたクルマだった。彼らに言わせれば、デモカーの第一陣は「すべてをこなした」そうで、テレビの自動車番組でその姿を見たことがあれば、どのような目にあったかは想像に難くないだろう。
われわれのルートは高速道路を走り、途中ブリストル運河を渡り、カーディフ空港裏の細道を通る250km弱。乱暴なテレビ・ショーに比べれば、どうということはない。
それでも、DB11は初めて運転したかのような興奮をもたらしてくれた。座面は非常に低く、わずかとはいえ高さを上げなければならなかった初めてのアストンとなった。それが、このクルマを大きく感じさせ、実際、DB9より多少ながら全方位に拡大されている。
ところが走るほどに、それが小さく感じられるようになる。目的地に着く頃には、クルマとの一体感すら覚えていたのだ。
セント・アサンの新工場建設用地には、ただただ驚かされるばかりだ。C130輸送機が6機は収まるだろう巨大な格納庫が3棟も、空っぽのままで建っているのだ。これを桁外れの自動車工場へ改築しようというのである。
訪れたときは着工されて間もなくだったが、そのポテンシャルは一目瞭然。アストンの配慮で、見渡すような格納庫の中央に、あの衝撃的なDBXコンセプトが置かれていたのを前にしたときは、感激に目が潤んでしまった。