アストン マーティンの歴史をめぐる旅:DB6からDBXまで(後編)
公開 : 2017.04.23 12:00
この場にライオネル・マーティンがいたならば
この場にライオネル・マーティンがいたならば、壮大な空間をどのような姿に作り替えるのだろうか。彼とアンディ・パーマーがディナーで席を同じくしたら、どのような将来を語り合うのだろうか。そんな想像を、広い空間いっぱいに膨らませる自分がそこにいた。
この特別な一日に運転したクルマたちの中で、最も洗練されていたのは、やはり最新のDB11だった。
ロード・テストでは、熟練のテスターたちが敏捷性を強調していたが、それは間違いない。しかし、個人的に最も感銘を受けたのは、その乗り心地である。
フラットで、落ち着きある減衰をみせるのだが、その一方で並外れたボディ・コントロールを可能にする硬さを、サスペンションの一番ソフトなモードでも持ちあわせているのだ。加えて、バンプを乗り越える際の静粛性は、スポーツカーではなかなか得がたいレベルにある。
セント・アサンでのDB11との別れは、この上ない悲しみを伴うものだった。ゲートを後にして、激しく後悔した。このスペシャルなブランドの歴史を一日で追うという趣旨だったとはいえ、104年間の最高傑作との別離に代わるラストシーンはなかったものだろうか、と。