なぜ、FIAT 500に今も夢中になるのか? ボンネットの下に潜む、エンジニアリングの魅力とは

公開 : 2022.11.16 10:25

知っておきたい、TWINAIRだけの技術

FIAT 500の居住性が必要にして十分であることはすでに述べたとおり。

けれども、それ以上に印象的なのが、走行性能が卓越していることで、市街地やワインディングロードでの走りが生き生きとしているだけでなく、高速道路では安定した直進性と乗り心地をもたらしてくれる。

900ccにも満たない排気量の2気筒ターボエンジン。FIAT 500 TWINAIR DOLCEVITAの魅力がそこにある。

エンジンも実に魅力的。

FIAT 500には排気量1240ccの4気筒自然吸気エンジンと排気量875ccの2気筒ターボエンジンがラインナップされているが、特に注目していただきたいのが「ツインエア(TWINAIR)」と呼ばれる後者のエンジン。

気筒数が生むアドバンテージ

2気筒エンジンは小型軽量で、4気筒に比べてピストンやバルブなどのムービングパーツが少ないために摩擦損失(フリクションロス)が小さく、燃費効率を高くしやすいことで知られる。

2気筒ターボユニット(最高出力85ps/最大トルク14.8kg-m)を積むTWINAIR DOLCEVITA。ダウンサイジングの究極の形と言える小さなエンジン。その中に隠された技術を探ってみよう。

昨今の自動車界はエンジンのダウンサイジング(小排気量化、少気筒数化)が顕著だが、その究極の姿がこのTWINAIRといえるだろう。ちなみに燃費は19.2km/L(WLTC)と優秀な値を記録している。

いっぽうで、2気筒エンジンといえば振動が心配になるかもしれないが、この点でもFIAT 500は「コンパクトなサイズを楽しさに置き換えている」ように思う。

バルブの駆動には一般的なカムではなく、油圧を用いる。バルブリフトの量とタイミングを無段階に変更できるので力強いトルクと高い環境性能を軽量・シンプルな機構で実現する。

たしかにTWINAIRは最新の4気筒エンジンに比べてバイブレーションは大きいかもしれないが、それは“振動”というよりも“鼓動”と呼びたくなるもので、エンジンが溌剌と仕事をしている“証し”のように感じられる。ある世代にとっては、一種のノスタルジーさえ覚えるだろう。

TWINAIRの魅力はそれだけではない。

▶️FIAT 500 公式サイトを見る

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 場所

    アネスト岩田ターンパイク箱根

    Anest Iwata Turnpike Hakone

    アネスト岩田ターンパイク箱根は、小田原から箱根や伊豆を結ぶドライブウェイ。道幅が広くカーブも比較的緩やかで、快適なツーリングを楽しめる。箱根小田原本線の終点にあるアネスト岩田スカイラウンジ(箱根大観山)では、富士山や芦ノ湖、相模湾や伊豆諸島など、360°の絶景を見渡せる。沿線には桜/紫陽花/紅葉などの植栽があり、四季折々の景色も魅力。

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