日産e-NV200コンビ

公開 : 2014.06.14 23:40  更新 : 2017.05.29 19:27

■どんなクルマ?

EVモデルのデビューに際して、NV200にはエアロダイナミクスの改善、フロントのトレッドの拡大、低重心化が図られ、ドライブ・トレインの敏捷性が増した。

日産リーフから流用するバッテリー・パックと電気モーターからなるドライブ・トレインが採用され、晴れて商用バンの領域にも日産謹製のEVが投入されることにあったのだ。

それぞれのグレードごとに後部座席の仕様が異なる。前部座席の背後にピクニックテーブルが備えられ、リアのスライド・ドアにはプラスチックのモールが充てがわれたエヴァリアと言う名の最上級グレードは、今回のテストでは一旦パスし、コンビという真ん中のグレードに位置する5人乗りの車両を借り出すことにした。

英国仕様のコンビの車両価格は£22,895(339万円)からとなり、もしリースをする場合は£17,895(265万円)になる。テクナ・ラピッドなるグレードの場合はアロイ・ホイールや多機能ステアリング・ホイール、オート・ライト/ワイパー、日産カーウイングスという乗車前にスマートフォンからエアコンやヒーターを作動できる機能が標準で備わり、最も乗用車に近い仕様になる。しかしながら、こちらのグレードでさえもエヴァリアのような内張りでなく、スタッド・ボルトによるいかにも商用車チックなはめ込み式の内装パネルが備え付けられている。

日産はこのクルマをタクシーとして使用するユーザーのことも視野に入れている。実際には全く不合理なことではないし、奇妙な形をしたリーフを購入したユーザーの子どもが成長するに連れて、サイズの大きなクルマを必要とした時にも充分な役割を果たしてくれるだろう。

EVの市場の中でリーフは非常に大きな成功を遂げ、11万台を世界市場向けに生産することを決定した次第である。小型商用車の市場にもe-NV200を投入しリーフと同等の成功への期待を抱いているようだ。また、長距離使用を主とするユーザーにとっても燃費に対する懸念がこのクルマによって解消されるわけなのだから、あるいはリーフ以上に成功するかもしれない。

商用バン・ユーザーのうち35%の人の走行距離は一日につき約130km以内に収まると日産は言うが、完璧なコンディションで走行する場合e-NV200は171kmをカバーできる。更に、市街地を含め全世界にバッテリーの80%を30分で高速充電できる装置網は拡大し続けているし、またこれは、家庭用のプラグで12時間かけて100%まで充電することを考えればかなりの手助けになる。

CO2排出が抑えられ、ほとんど無音で走行できる走行範囲でも明確な強みがある。支払うべき維持費や自動車税は言うまでもなく少なくなり、さらに渋滞税(特定の時間帯にロンドン中心部の特定のエリア内に車を乗り入れる際に課金されるシステム)ではエコカーであるが故にディーゼル・エンジンと比べて優位に立つことができ、ロンドンで4年間使用した場合には£16,127(239万円)分の削減と同等であるという結果を算出する。さらにリーフよりも拡大された車内は、部活動などの送迎にも一役買うだろう。

空力特性の改善のために新たにデザインし直されたフロント周辺はリーフのそれに似通った形になっていて、合わせて160mm延長されている。その内50mmは家庭での充電を行い易い形状にする目的で、また80mmは高速走行で衝突した際の、そして30mmは歩行者と衝突した際の保護を目的としている。

フロント・アクスルはリーフと共用しているためにバンパーにも形状変更が施され、ディーゼル・モデルに比べるとトレッドが40mm拡大された。

日産テクニカル・センターに所属する、車両レイアウトのチーフであるクレイグ・パターソンは、モーターを設置する土台など可能な限りリーフのドライブ・トレインを用いることにより、デビュー当初EVの展開を考えていなかったe-NV200のコストを削減することを達成したという。

床下に収められたバッテリー・パックはe-NV200に合わせ僅かに設計が改められ、中央の重心をディーゼルのモデルよりも下げることに成功した。ただし結果として乾燥重量は230kg重くなっている。

■どんな感じ?

ひとたびこのクルマに乗り込めば、直立する見晴らしのよいシート・ポジションやステアリング・ホイールの角度など、まさに商用車然としており、エアコンのスイッチや、ナビゲーションなどはリーフの車内で見たことのある素材が使用されている。

バッテリー残量の表示や、エコ・ボタンとギア・シフト双方から選択できるドライブ・モードもリーフのそれと等しい。ギア・シフトはリーフの扱いにくいボタン型のシフターとは異なり、ドライブとBレンジから構成される従来のものを採用している。Bレンジとは、例えば市街地を走行する際に行うブレーキングによるエネルギーを節約するためのモードとなる。

リーフと同様さほど静かではなく、特にe-NV200はキャビンが大きいため、電気系統のノイズの防音には今一歩満足できない。

もちろんこのクルマは、商用車であるからプラスチック素材が多用されている点は仕方がない。どちらかと言うと、触り心地というよりも建て付けを優先させたと言って良いだろう。乗り心地は、先述通りディーゼルよりも重心が下げられているため安定感があるしモーターならではの即座のレスポンスは面白いが、多くの読者の予想にたがわず商用バンのそれと思って頂いて良いだろう。

0-100km/h加速に要するタイムは14秒、最高速度は122km/hとなるが、もしこれを試すならば常に充電設備を探しまわる羽目になるだろう。エンジン・ノイズそのものは静かである反面、風切り音は目立つがディーゼル・エンジンに良くある振動は、もちろん存在しない。更に多くの人が気になるステアリングやブレーキ性能、サスペンションは全てきちんとした振る舞いを見せてくれた。

■「買い」か?

大は小を兼ねると言う言葉があるように、e-NV200はリーフでできる全てのことをそつなくこなす事ができる上、荷室容量は大きい。路面での洗練度合いは完璧とは言いがたいが、もしこのサイズの車を必要としているならば間違いなく買いだ。

(カイル・フォーチューン)

日産e-NV200コンビ

価格 £22,895(396万円)
最高速度 122km/h
0-100km/h加速 14.0秒
燃費 165Wh/km
CO2排出量 0g/km
乾燥重量 1571kg
エンジン 80kw ACモーター
最高出力 108ps/
最大トルク 25.9kg-m
ギアボックス オートマティック

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