ウェッジシェイプ・デザインの色褪せない魅力 2台のロータス・エスプリに乗る
公開 : 2017.04.15 00:00 更新 : 2017.05.29 19:24
ウェッジシェイプ・デザインといれば、1974年にデビューしたランボルギーニ・カウンタックとランチア・ストラトス、そして1976年にデビューしたこのロータス・エスプリが即座に思い浮かぶことと思います。前者2台はベルトーネ、そしてエスプリは初代がジウジアーロ、2代目がピーター・スティーブンスのデザインによるものです。その違いはともかく、われわれ、特に1970年代に多感な時期を過ごした人々には、ウェッジシェイプは今なお魅力のあるデザインであることは間違いありません。(姉妹サイト、CLASSIC & SPORTSCARより転載)
ロータスの不朽のミドエンジン・スポーツ、エスプリ。オリジナルであるジウジアーロ・デザインと、第2世代となるスティーブンス・デザインの両モデルにロス・アルクレイシが試乗した。エッジの効いたシャープなシルエットの第1世代か、それともしなやかな曲線で囲まれた第2世代か。果たしてあなたはどちらを選ぶのだろうか。
強烈な存在感を醸し出すスタイル
1970年代に多感な少年期を過ごした私にとって、ジェームズ・ボンド・バージョンのロータス・エスプリのコーギー製ミニカーが自分の宝物だったことははっきりと覚えている。しかし、とりわけウェッジシェイプ・デザインの大ファンだったという自覚はない。だから、バックミラー越しに見えるカリプソ・レッドのエスプリS1のアヴァンギャルドなスタイルを惚れ惚れと見てしまう自分に何か不思議な気持ちを感じた。ジョルジェット・ジウジアーロ作となる均整の取れたラインはシンプル・デザインの極みともいえ、それが車高の低いエスプリにスーパーカーのようなダイナミックさを与えている。もっとパワーを強化した改造バージョンのエスプリのステアリング・ホイールを握ったこともあるが、パワーではなくそのスタイリングこそが人から畏怖されるべき強烈な存在感を醸し出しているにほかならない。
この2台のエスプリでウィルトシャーの街や村を走り抜けると、他のドライバーも歩行者も皆一様に驚く。オリガミのような鋭角的なスタイルを持つエスプリS1、そして私の乗った、より靭やかで丸みのあるエスプリへ視線を移す。この2台を見比べながら、それぞれがそれぞれの評価を下し、お気に入りのモデルにじっくりと視線を注ぐ。どうやら年代の旧いS1の方が人気のようだ。そのひとつの要因は、色のせいかもしれない。好天に恵まれた夏の日には、誰だって真っ赤なスポーツカーのほうを好むものだ。
もちろんそれは、オリジナル・モデルのピュアなラインが、ジウジアーロのデザイン・スタディ・モデル、シルバーカーと同じように、人を魅惑する力を今でも持っているせいかもしれない。
ジウジアーロがチャプマンにコラボレーションを持ちかけた
ジウジアーロは、1971年のジュネーブ・モーターショーの会場でロータスの創業者コーリン・チャプマンにコラボレーションを持ちかけた。そして、ロータス・ヨーロッパの後継モデルのプロトタイプをデザインするようにチャプマンから依頼を受ける。その9ヶ月後、トリノ・モーターショーのイタルデザインのブースに、エスプリの最初のプロトタイプが展示された際は、誰もがその未来的なフォルムに息を呑んだものだった。
波乱に富んだ開発期間を経て、1973年11月には2代目のプロトタイプが発表された。この2代目には、初代プロトタイプに採用されていたヨーロッパの改良型シャシーではなく、プロダクション・モデルのものにほぼ近いシャシーも与えられていた。しかし、オイル・ショックのあおりを受けて、ロータスは開発計画の大幅変更を余儀なくされる。当初は4気筒とV8の2つのエンジンを搭載したモデルを生産予定であったが、1974年になって、フロント・エンジンのエリートに搭載する予定だったDOHC16バルブの4気筒エンジンを搭載するモデルだけを開発することになったのだ。
ロータスは他メーカー製のパワー・ユニットを改良した上で各モデルに搭載してきたメーカーだが、初代エスプリに搭載されることになる907型はすべて自社開発した最初のエンジンとなった。当初はヴォグゾール製の傾斜して搭載される4気筒を利用する筈だったが、ロータス62に搭載した際に弱点が見つかったためにこの計画は中止になった。そのためロン・バールは、自社開発エンジンの雛形としてだけこのエンジンを利用することにした。そして、エスプリのジグソー・パズルの最後の1ピースに選ばれたのは、シトロエンSM用の5速トランスミッションであった。このギアボックスはすでに生産中止になっていたものだが、ロータスの指定したギア・レシオを持ち、そしてここが肝心だが、手頃な価格でシトロエンが長期供給することを約束してくれたから、というのがその理由だ。