試乗 ジャガーE-タイプ 当時ジュネーブでの展示車両で発表の地へ

公開 : 2017.10.28 17:10

ジャガーE-タイプの試乗記は数多くあれど、それが当時のジュネーブ・モーターショーで初披露された個体そのものということは珍しいでしょう。知られざる舞台裏まで、たとえば伝記を読むような気もちでゆったりとご覧ください。

もくじ

E-タイプ発表 ジュネーブの舞台裏
なぜE-タイプのデビュー 特別だった?
いざ「885005のE-タイプに」に試乗
885005のE-タイプ、危うい時代
音、香り、感覚、味わい

E-タイプ発表 ジュネーブの舞台裏

1961年のジュネーブ・モーターショーにジャガーE-タイプが到着したときの様子は、まるで何もない大草原に巨大な嵐が突然吹き出したかのような出来事だった。

E-タイプは、D-タイプの時代から密かに開発が進められてきた。テストのためにMIRAに向かう途中でその姿を見かけた連中や、工場にいる知り合いからこっそり情報を仕入れた連中の噂話が、嵐の勢いをさらに強めた。

1960年のル・マンでは、ブリッグス・カニンガムがクロスオーバーのプロトタイプ-E2Aで出場し、そのスタイルはより明確になった。そして、遂にニューモデルとして公式発表されたときには、嵐があまりに激しくなり、E-タイプのライバル車をすべて吹き飛ばした。

以来、E-タイプの発表時の顛末は伝説となった。

ウィリアム・ライオンズ卿は、ニューモデルの発表を巧みにやり遂げた。彼は、英自動車工業会(SMMT)を説得して得た資金を利用して、ジュネーブ・モーターショーの開催前にジュネーブ湖畔のレストラン、ガストロノミイー・ドゥ・パルク・デ・オー・ヴィヴでプライベート発表会を開催した。

このイベントは、ニューモデルの発表と、その後行われるジャーナリスト達によるE-タイプ試乗というふたつの部分から構成されていた。そのため、このイベントには2台のE-タイプが使用された。

わたしたちがよく目にする、E-タイプの隣にライオンズが誇らしげに立った屋外の写真は、このレストランの外で撮影したものだ。

屋外に展示されたこの9600HP、シャシー番号885002のE-タイプは、ジャガーの権威であるフィリップ・ポーターが所有している。ジャーナリストの試乗に用いられたのは、このクルマだった。

もう1台のシャシー番号885005のE-タイプは、当初ロードスターとして製造され、後にクーペ開発のためのテストベッドとして利用された。

ライオンズは、デザインプロセスが後期にさしかかり、クーペのフルサイズモックアップを目にするまで、タイプ-Eをクーペとして考えていなかった。

885005は3月にジャガーのブラウンズレーン工場から大型トラックでジュネーブに輸送され、翌日、最終調整のためにガレージ・クラパレドに到着した。

ここからさらにオー・ヴィヴ公園に輸送され、慎重にレストランの中に運び込まれた。発表の際、ウェイターがシルバーのカバーを取りのけて披露できるよう、クルマ全体を覆う合板のボックスが特別に組み立てられた。

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