ラスト・ドライブ VWビートル 歴史やヒット作を振り返る
公開 : 2018.08.04 16:10
フォルクスワーゲンの作り出した尊いアイコン的存在が、ついに(今のところ)後継車のないまま消え去ろうとしています。AUTOCAR英国編集部のマット・プライヤーがビートルの80年にわたる歴史とその功績に思いを馳せつつ、あらためて現行モデルに試乗しました。
もくじ
ー ビートルが生まれた時代
ー 手ごろな価格 単純な設計
ー 終戦 生産計画の中断
ー 100万台超の大ヒット
ー 英国南海岸での試乗
ー ビートルが生み出したヒット作たち
ビートルが生まれた時代
フォルクスワーゲン・ビートルを象徴する言葉にはこと欠かない―ヒッピー、ハービー(映画「ラブ・バグ」でビートルが演じた「意思をもつクルマ」の役)、ダッシュボードの一輪挿し、平和、バグ・ジャムとラン・トゥ・ザ・サン(いずれも英国の伝統あるフォルクスワーゲンのイベント)。
この世界一愛された丸い屋根のクルマは、65年におよぶ生涯で2100万台もつくられた。オリジナル・ビートルの生産終了は2003年だったがあまりに愛されるあまり、まだ生産中だった1998年にフォルクスワーゲンも「ニュー・ビートル」というこれまたかわいいクルマで応えたほどだ。
ビートルが生まれたのは、人類の歴史上もっとも暗い時代といってもいい時期だった。おまけに、ビートルの構想だけでなく生産も普及も先頭に立ってすすめたのは、その暗い時代を象徴する人類史上最悪といってもいい人物だったのだ。なのにその産物がどうして、愛と希望と楽観主義をほかのいかなる商品よりも体現しえたのだろうか?
ビートルが生まれてからの数年間という時代の残忍さは、どれだけ大げさなことばでも言い足りないくらいだ。そもそもビートルの原型は、アドルフ・ヒトラーが大衆車として構想し、それに基づいてフェルディナント・ポルシェが設計したKdFワーゲン(「歓喜力行団のクルマ」という意味)だ。お披露目は1939年2月、ベルリン・モーターショーだった。