ロードテスト マクラーレン・セナ ★★★★★★★★★★
公開 : 2018.10.27 11:40 更新 : 2018.12.03 19:18
AUTOCARのロードテスト90周年という記念すべき回に選出したクルマは、800psの最高出力と800kgのダウンフォースを誇る、マクラーレン・セナ。ロードリーガルレーサーとして至らない点はほぼゼロに近い、満点にふさわしい仕上がりだといえるでしょう。
もくじ
ーはじめに
ー意匠と技術 ★★★★★★★★★★
ー内装 ★★★★★★★★★★
ー走り ★★★★★★★★★☆
ー使い勝手 ★★★★★★★☆☆☆
ー乗り味 ★★★★★★★★★★
ー購入と維持 ★★★★★★★★★★
ースペック
ー結論 ★★★★★★★★★★
はじめに
今回のロードテストで掘り下げるのは、マクラーレン・オートモーティブ社が生み出した、史上最もエクストリームなロードカー。
まだ8年しか歴史のない、マクラーレン・オートモーティブ社が生み出した公道向けのクルマに対して、この表現はやや大げさにも聞こえるかもしれない。しかし、マクラーレンP1から675LT、720Sと、短期間のうちに次々とカタログモデルをリリースし、過去のマクラーレンF1という究極のモデルも、多くの人にとってまだ鮮明に記憶にあるはず。また、マクラーレン・セナは、世界最大規模の金融コングロマリットの投資を受けた時点で、生まれる運命にあったようにも思える。
モータースポーツ界での成功を長年収める中で、厳格な「フォーミュラ」を守り、技術を蓄えてきたマクラーレン。素材やエンジン配置、サスペンション構成、タイヤの接地面積、最大ダウンフォース量、重量制限など、条件は多岐に渡る。ときには、イノベーションという名のもとで、ひとつやふたつ、ルールを曲げることもあったけれど。その一方で、ロードカーの場合は別のルール、快適性や使いやすさ、ドライバビリティ、実用性などをバランスさせた、妥協のもとで生まれている。突出したパフォーマンスとハンドリング性能も、妥協が必要となる。
もし仮に、それらの縛りがなかったらどうなるのだろう。予算の制限もなく、レースで培われた技術をすべて投入できるとしたら。あるいは、普通の人でも運転できるレベルに落ち着かせていたパフォーマンスを、最大限にまで引き上げたとしたら。マクラーレンは、どんなクルマを生み出せるのだろうか。
その答えが、このマクラーレン・セナだといえる。マクラーレン・オートモーティブCEOのマイク・フレウィットをもってして、「マクラーレンが持つモータースポーツDNAの象徴」と表するクルマ。アイデンティティだともいえる。そして、それを具現化したポテンシャルを表現するために選ばれた名前は、伝説的なレーシングドライバーだった。
中にはアイルトン・セナの記録と記憶は、モータースポーツ界全体に属するものだとする見方もある。そういう意味では、マクラーレンの登用は不適切に感じられるひともいると思う。ただ、これまで500回にも及ぶブラジルの慈善団体、アイルトン・セナ財団への寄付に加えて、セナ最後のシャシーをオークションにかけ、得られた収益も寄付していることは、偉大なレーサーへの最大の敬意の表れではないだろうか。
マクラーレン・セナの実力を示すことも、そんな疑問を晴らす上で非常に重要だ。AUTOCARとして、ざまざまな比較テストや考察をし、ロードテストの記事とすることで、マクラーレンの偉大さにも見えてくると思う。