ロードテスト シトロエンC3エアクロス ★★★★★★★☆☆☆
公開 : 2019.04.06 11:50 更新 : 2021.03.05 21:42
ファニーフェイスなシトロエンC3エアクロスは、ハンドリングは緩慢でステアリングは無感覚な、AUTOCAR基準では物足りない一台。でも扱いやすいドライブトレインと高い実用性、なにより個性的なルックスで、コンパクトSUV市場の人気者になりうる存在です。
もくじ
ーはじめに
ー意匠と技術
ー内装
ー走り
ー使い勝手
ー乗り味
ー購入と維持
ースペック
ー結論
はじめに
2018年の小型ファミリーカー市場における量販モデルのつくり方がいかなるものであったか総括するなら、C3ファミリーの地上高を引き上げたバージョンであるシトロエンC3エアクロスを見るのが手っ取り早い。これを、先代モデルに当たるC3ピカソと比較すれば、よりわかりやすいはずだ。巧みなパッケージングで高い評価を受けたC3ピカソと、その後を受けたC3エアクロスは、プラットフォームを共用し、ドライブトレインもほぼ同様。プロポーションも似たようなものだが、シルエットは見慣れたMPVスタイルから流行りのSUV調へと宗旨替えしている。といった話は、あちこちで語られていることだ。
これは自動車界の大きなトレンドとなっており、路上にはSUVや、その要素を持ち合わせたクルマが数多く走っている。そして、そうしたジャンルにおいて、コンパクトモデルへのニーズが驚くほど高まっている昨今、各社ともそれを満たそうと躍起になっている。それゆえ、今回のシトロエンは、挑むべきライバルがあまりにも多い状況に置かれることとなるのだ。マツダや日産、セアト、フォード、ヒュンダイ、同郷のルノーや身内のプジョー、盟友となったヴォグゾール/オペルなど、さまざまなメーカーがいずれも競合モデルを送り出してくるのだから。
われわれに言わせれば、それらのいずれも、走り志向のドライバーを魅了するようなシャシーは持ち合わせていない。このクラスにおけるデキのいいモデルでも、優れた燃費性能や広さ、洗練性とともに、それなりの俊敏さを備えているのがせいぜいだ。より大型のSUVやクロスオーバーでもその点では似たようなものだが、このセグメントで成功するためには、それらはもちろん、さらにどこかで際立つものを示す必要がある。さもなければ、クラストップを争うことはできない。
このC3エアクロスの場合、そのさらなるどこかはチャーミングさにある。これは、競合モデルたちには決定的に欠けている類のものだ。このクラスのオートカー的ベストであるセアト・アロナでさえ、ヴィジュアル面で明確なキャラクターを打ち出せてはおらず、あくまでどこにも隙のないデザインに徹している。もっとも、それはそれでよくできているとは思うのだが。
90通りの組み合わせが選べる鮮明なボディカラー、陽気なボディワーク、フランス車ならではのインテリアが相まって、C3エアクロスはドイツ資本ブランドのクルマたちに対するアンチテーゼとなっている。C3エアクロスの登場時に、とあるテスターはこんなことを言っている。4WDの設定がないにも関わらず、この新型車には広く愛されたフィアット・パンダ4×4の匂いがする、と。実に高い評価だ。
第一印象は上々だったC3エアクロス。しかし、冷静に見返しても購入をおすすめできるクルマなのか。それをはっきりさせていこう。