穴だらけで反対側が見えた ローバーP5Bクーペ 尊敬する祖父が導いたレストア
公開 : 2019.07.13 07:50 更新 : 2020.12.08 10:40
運命が導いた、ローバーP5Bとマシュー・サンダースとの出会い。オークションで手に入れたクルマは想像以上にひどい状態でした。スクラップにするかレストアするかという2択に迫られた彼が、悩んだ挙げ句にくだした決断とは。
もくじ
ー 尊敬する祖父が導いたローバーP5Bクーペ
ー レストアは偶然つながりが生まれた工房で
ー 想像以上の難作業
ー 隅々までほぼすべての部分に手を加えた
ー プアマンズ・ロールスロイス
ー レストアすることに必然性を感じた
ー マシュー・サンダース流の自動車コレクション
尊敬する祖父が導いたローバーP5Bクーペ
セレンディピティ。運命。カルマ。クルマとの出会いの呼び方にはいろいろあるが、AUTOCARの読者ならどんな状況なのかはご理解いただけるだろう。今回は実業家で熱心なクラシックカー・エンスージャストであるマシュー・サンダースと、ローバーP5Bクーペとの物語を見てみよう。
「ある晩の遅くに、インターネット売買サイトのeBayをビール片手に眺めていた時、そのクルマを見つけたのです。以前からローバーP5Bクーペを探してはいました。しかし何より重要だったのは、そのクルマのナンバープレートでした」 と振り返るサンダース。当時の彼は人材紹介企業を経営する身でもあり、企業名は「デ・ポエル(de Poel)」だった。第二次大戦中にオランダから英国へ移ってきた、海軍所属の技術者である祖父の名前からとったという。
「わたしは祖父ととても仲が良く、祖父を尊敬していたこともあって、この名前を付けました。eBayに出ていたクルマを眺めていて、そのナンバープレートに目が奪われました。そして、わたしが買わなくては、と思ったんです。とても奇妙な偶然だったといわざるを得ません」 彼はバーミンガムの男性から、実物も見ずにP5Bを落札した。7000ポンド(101万円)で。
「当時としては法外に高かったと思います。しかし、このDPO3Lというナンバーを付けていたという理由だけでも、倍は払ってもいいと思いました」 サンダースが仕事で使用しているメールアドレスから支払い確認のメールを送った時の反応も意外なものだった。 「彼はわたしに、購入の意志は変わりませんか? クルマに見合った金額ですか? と聞いてきたんです。わたしは、はい、と答えましたが、後の祭りでした」