ディエップ産のダイヤモンド アルピーヌ・ルノー3台比較試乗 A110/A310/GTA
公開 : 2019.07.21 07:50 更新 : 2021.05.13 12:00
最近アルピーヌA110が生まれ変わりましたが、初めてアルピーヌ・ルノーが表舞台に躍り出てからすでに60年以上が経過しています。A110に始まりA310、GTAと3世代にわたりレースなどでも活躍したフランスの伝説的スポーツカーに試乗しました。
もくじ
ー 戦後登場したアルピーヌ
ー アルピーヌA110の誕生
ー レースでも活躍
ー オンザレールのA310
ー 実用性重視のGTA
ー 英国ではルノーブランドで
ー 荒々しいが上質
ー 夢中になれるA310
ー オーナーたちの話
戦後登場したアルピーヌ
(本記事は2016年5月に発行されたクラシック&スポーツカー誌の再掲載です)
警官が「リア」を覗き、ターボチャージャー搭載の2.5ℓエンジンを見つけると、困惑した表情がさらに広がる。「これは何でしょうか?」手がかりを求めてノーズからテールまで検分した後、ついに訊ねてきた。バッジを見てもわからないらしい。筆者は、この謎のクーペがアルピーヌ・ルノーだと答えたものの、その警官は納得できないようだった。その情報を咀嚼するために間が空き、このクルマをUFO、すなわち未確認フランス製物体に分類し終えた後、警官はようやくうなずいた。
オーナーであるアンドリュー・ジョーンズ氏が後で筆者に語ったところによれば、よくあることらしい。GTAは、1986年から1992年まで、英国で初めて販売されたアルピーヌ・ルノーであるが、右ハンドルモデルはわずか582台にとどまるため、英国の公道で目にするのは珍しい。英国における販売台数はわずかな台数にとどまったものの、ドーバー海峡の向こう岸におけるアルピーヌ・ルノーの40年以上にもわたる経歴は、長く、輝かしい。
アルピーヌの物語は、1950年代初頭、ディエップから始まる。フランスにおける最年少のルノー・ディーラーであったジャン・レデレが4CVベースのレースバージョンを数多く手がけ、ナビゲーターのルイ・ポンとともに複数のレースで印象的な勝利を飾り始めた。レデレは、1950年と1951年のモンテカルロ・ラリーで優勝しかけ、また1952年のミッレミリアでは、大差でクラス優勝し、1953年と1954年も優勝を重ねた。
戦後のフランスが誇れるスポーツカーを生産したいという想いがレデレのアグレッシブな精神に芽生えた。フランス国内ではコーチビルダーの関心を引くことができなかったため、4CVをベースにしたクーペの製作を1952年にドイツのビルダーに委託した。スタイリングを手掛けたのはミケロッティだった。そのクルマこそが、最初のアルピーヌであるA106の生産へとつながり、次に、ドーフィンをベースにしたA108を生み出した。A108の丸みを帯びた小型のベルリネッタモデルが1961年に登場する。