ブランド史上最小のV6ユニット ベントレー・ベンテイガ・ハイブリッド 試乗
公開 : 2019.08.09 10:10 更新 : 2019.08.09 10:57
ベントレーとしては初めてとなるハイブリッドが、大型SUVのベンテイガに採用されました。スペックシート上は優れた性能を発揮しているように読めるものの、老舗ブランドに抱く一線を画する魅力は薄まったと評価するのは英国編集部。アメリカ・シリコンバレーでの試乗です。
ポルシェのハイブリッドと関係の近いエンジン
英国の重要なブランドから、極めて重要なモデルが登場した。2023年までに、ベントレーの全てのモデルレンジに、ハイブリッド搭載グレードをラインナップさせるという目標の、はじめの一歩となるクルマだ。
インテリアには、このグレードの正体を示す新しいドライビングモードのボタンが追加されている。しかし、ボディの隅に貼られたハイブリッドのエンブレムを探さない限り、一見すると通常のベンテイガと大きな違いはわからないだろう。
ボンネットを開けば、通常なら4.0LのV8か6.0LのW12ユニットが納まるところだが、このハイブリッドに搭載されるのは、3.0LのV6。これまでのベントレーに搭載されてきたエンジンとしては、最小のユニットとなる。もとはアウディ製ながら、ポルシェ・パナメーラやカイエンのハイブリッドにも搭載されているユニットと関連性が強いという。
エンジンは、ベントレーとしては「控えめ」な339psを発生し、さらに電気モーターが127psを上乗せする。だが他のハイブリットと同様に、ガソリンエンジンと電気モーターのパワーピークの発生回転数が異なるため、システム総合での最高出力は足し算よりはわずかに低い450psとなっている。
昨今のベントレーの走りに期待するパワーからするとずっと小さい数字だが、一方で、昨今のベントレーの中ではかなりの重量を獲得している。その実、2626kg。このクルマより重たいベントレーとなると、ミュルザンヌぐらい。しかも、大差はない。
車重は2626kgに増加も0-100km/hは5.5秒
この車重を考えると、スペックシートの数字はかなり印象的だ。0-100km/hはわずか5.5秒で、最高速度は254km/h。ランボルギーニ・ウルスを脅かすことは難しいにしても、多くのドライバーにとっては、必要充分以上の数字だと思う。
ベンテイガ・ハイブリッドは25kmの距離を電気の力だけで走行可能。気候条件や道路状況によっては、それ以上の距離の走行も可能だろう。近い将来、ローエミッション・ゾーンやゼロエミッション・ゾーンなど、環境規制が一層厳しいエリアが設定されても、そこに備えてバッテリーの残量を運転しながらコントロールすることもできる。ただし、通常のハイブリッドとは異なり、認証上の理由から、エンジンからバッテリーを直接充電することはできないそうだ。
実際走らせてみると、このエンジンはベントレーのものではないと感じてしまった。V型6気筒は充分に静かでパワーもある。アクセルペダルを踏み込むと、少し楽しさも味わうことができる。だが回転数を高めていくと、ブランドイメージとは異なる、少し張り詰めた大きなサウンドが響いてくる。ベントレーといえばV8かV12という時代に生きてきたわれわれとしては、そのサウンドに違和感を感じずにはいられない。
ベントレーとしては、V8よりもシリンダー数が少ないエンジンを採用するのは60年ぶりとなる。走行パフォーマンスだけ見れば、大型SUVに期待する以上のものを備えてはいる。しかし、このようなモデルのオーナーにとって、クルマが必要だという以外に、満足できるだけのものを備えているのかは疑問だ。
反面、ガソリンエンジンをオフにして、電気の力だけで交通の流れに合わせて走らせる時のフィーリングは、相当に良い。静寂のままにシームレスな加速を披露する仕草は、まさにベントレー。この上質な味わいを存分に味わえるであろう、2025年までに登場すると約束されている、純EVのベントレーにかなり期待してしまった。