アウディQ8に国内試乗 初のSUVクーペ、身のこなしは軽く サイズは要注意

公開 : 2019.08.10 05:50  更新 : 2021.10.09 22:21

アウディQ8の国内試乗記です。流行りのSUVクーペ枠ですが、ライバルと異なるアウディらしい味わいがありました。サイズより軽く感じるのも魅力です。実際は大きいですが……。

「これをクーペと呼んでいいの?」

アウディが同社初のSUVクーペを自認するQ8を本邦デビューさせる。

クーペライク、クーペ風、4ドア・クーペ、そしてSUVクーペ等々、近年の自動車世界では頻繁にクーペという言葉を耳にする。

SUVクーペ後発組らしく、流麗なクーペラインを取り入れなかったアウディQ8。
SUVクーペ後発組らしく、流麗なクーペラインを取り入れなかったアウディQ8

SUV世界における「クーペ」が指し示しているのはドアの枚数や低いスタイリングにあるのではなく、AピラーからCピラーまでのルーフラインが滑らかなひとつの曲率で描かれているか否か、であるようだ。

SUVクーペの先達であるBMWのX4やX6、メルセデスのGLCクーペやGLEクーペあたりはまさにそうだし、ポルシェカイエン・クーペのルーフラインも「ほぼ」そんな感じだからである。

以上の固定観念をもってドラゴンオレンジと呼ばれる特徴的なカラーリングのアウディQ8を観察してみると「これをクーペと呼んでいいの?」となる。

ルーフラインは水平に近いし、Cピラーは完全に独立したカーブを描き、普通のSUVとSUVクーペの中間くらいの角度に寝かされているからだ。

SUVモデルのQ7に対するSUVクーペのQ8という関係性はライバルたちと同様だが、ことスタイリングに関して後発のアウディは同じわだちを踏んでいない。

上記のライバルたちは、ボディの後半のみをクーペ風に仕立て直しているが、Q8は顔も専用だ。しかも8角形のシングルフレームグリルを与えられたフロントマスクの方がリアよりはるかにインパクトが大きい。アウディ初のSUVクーペは一味違うのである。

Q8、格好よし デメリットなし

アウディのSUVデザインと言えば、先のQ2でこれまでとは違う多面体のモチーフが採用され話題となったが、Q8のデザインはそれをさらに進化させたように見える。

アウディによればQ8のデザインこそ、今後の同社のSUVモデルのひな型となるらしい。

アウディQ8
アウディQ8

Q8のアーキテクチャーはQ7と同じMLBエボを採用しているが、Q7比の寸法は全長で-75mm、全高で-30mm、全幅は+25mmとなっている。

実寸としてはわずかな違いといえるが、低く踏ん張ったQ8のスタイリングは軽快で力強く、新世代のアウディを予感させてくれる。

アウディQ8を真横から観察してみると、リアドアが大きく、一方リアオーバーハングはかなり短く見える。ところがリアの荷室をチェックしてみると、大きく開くリアゲートのおかげもあってずいぶんと広く感じられる。

容量的にはQ7の770Lに対して605Lに留まるが、その165L差に不便を感じるユーザーは少ないのではないだろうか。クーペ的に寝かされたCピラー&リアガラスによって削り取られた部分はデッドスペースと考えるのが一般的だからである。

一方リアシートはリアドアの大きさ通りに広大だ。Q8は2列シートだがプラットフォームを共有するQ7の3列用のシートスライド機構が備わっており、リアシートが前後に100mm移動可能になっている。

後ろに下げた状態のリアシートの足元はリムジンのように広大で、しかし件の水平に近いルーフのおかげでヘッドクリアランスも充分に確保されている。

つまりQ8は巧妙なパッケージングによってデザイン優先によるデメリットを解決済みなのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。

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