V6ガソリン 新型 フォルクスワーゲン・トゥアレグTSI 試乗 日本導入にも期待
公開 : 2019.08.12 09:50
2018年に3代目が登場した、フォルクスワーゲンのフラッグシップモデルとなるトゥアレグ。2019年版ではV6ガソリンエンジンを搭載することになりますが、ディーゼルエンジンに匹敵する力強さを得ることは難しいようです。日本導入も予定されている大型SUVを、英国で評価しました。
Q7やカイエンなどにも採用するユニット
ディーゼルエンジンの排気ガス偽装問題、ディーゼルゲートの影響は、幅広い車種へと及んだ。これまでトゥアレグのような大型SUVの主力ユニットでもあったディーゼルエンジンだが、ガソリンエンジンへと転換が進んでいる。低回転域での太いトルクと、実環境での優れた燃費は、車重のかさむSUVにとって強みでもあった。しかしフォルクスワーゲンのフラッグシップモデルたりとて、変化を避けることはできなかったのだ。
ターボチャージャーで過給される3.0LのV6エンジンは、フォルクスワーゲン・グループの大型SUVでは一般的なユニット。MLBプラットフォームを採用する、アウディQ7やQ8、ポルシェ・カイエンなどにも採用されている。エンジン自体の能力は高く、最高出力339ps、最大トルク45.8kg-mを発生。8速ATを介して4輪を駆動する。V6ディーゼルエンジン・モデルと比較して50kgの軽量化につながるが、最大牽引重量に変わりはない。
ガソリンエンジンを積んだトゥアレグを運転してみると、このクラスでディーゼルエンジンが主力になってきた理由が良くわかる。確かにV6エンジンは静かに回転し、洗練性も高い。しかし心地よい加速感が得られるほどにエンジンの回転数を上げると、思わずデジタル・インスツルメントに表示される瞬間燃費が気になってしまうはず。
市街地を走ったり、短い移動を繰り返すような場面では、平均燃費が7.0km/Lを超えることはほとんどどない。アピアランスもインテリアもハイテク感が漂うが、この数字を眺めることは、心地よい体験とはいいにくいだろう。公表されているWLTP複合の燃費は9.0km/Lで、高速巡航走行を長い距離した場合なら、現実的な数字とはいえる。
気付かされるディーゼルエンジンの魅力
この事実を知ってしまうと、V6ディーゼルエンジンの優れた経済性だけでなく、大柄なボディの割に良好なドライバビリティを提供してくれていたことに、改めて気付かされる。カタログスペック上は加速力は充分に読めるが、ディーゼルエンジンが備えていたトルクを生かした柔軟性には欠けている。
特にクルマの動き始め、低回転域でのトルクが細く感じられてしまう。活発なスタートを味わうには、アクセルを深く踏み込む必要がでてくる。一方で燃費向上を目指して、トランスミッションは調整を受けており、アクセルペダルも踏み始めから50%を過ぎたところで、力み過ぎを意識するように踏力に変化が付けてある。ドライビングモードをノーマルのままにして、キックダウンしない程度にアクセルを踏んでいると、かなり怠惰な振る舞いを味わうことになる。
しかし、シフトセレクターを動かしてスポーツモードにすれば、レスポンスはシャープに変化。その違いを体感すると、スポーツモードが標準の設定としては適正で、現状の標準モードは、エコモードのようにすら感じられる。大きなボディにパワフルなエンジンを搭載しているという事実に反して、この設定が少し残念でならない。
確かにガソリンエンジンの方がディーゼルエンジンより50kgも軽いとはいえ、依然としてトゥアレグが2tを超える車重を持つことは、ハンドリングからも感じ取れる。仮にこれがディーゼルエンジンなら、さほど気にならないのだろう。