新開発の直6ユニット搭載 ランドローバー・レンジローバー・スポーツHSTに試乗

公開 : 2019.08.27 09:50

JLRの新世代直列6気筒エンジンがレンジローバー・スポーツに採用されました。吹け上がりも滑らかで洗練性も極めて高く、都市部を前提としたクルマのスタイルともベストマッチといえるユニットといえそうです。

JLR社新開発の直列6気筒ユニット

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

レンジローバー・スポーツ「HST」は、ポルシェカイエンのライバルとして追加されたグレードとなるが、JLR(ジャガーランドローバー)社が開発した、新しい直列6気筒エンジンを初めて搭載するクルマにもなった。

JLRがV6エンジンにかわって直6エンジンに移行しようとしている理由はいくつかある。モジュラーブロック構造を持つ、インジニウムユニットの4気筒エンジンを生かして開発が可能だという理由も大きい。バンクを挟んで左右に分かれるV6エンジンほど吸気や排気システムが複雑にならず、パッケージングも簡素化できるというメリットもある。さらにAUTOCARの読者ならおわかりかと思うが、直列6気筒という機構自体が持つ、優れたバランス性による滑らかな回転フィールも見逃せない魅力だ。

ランドローバー・レンジローバー・スポーツHST
ランドローバー・レンジローバー・スポーツHST

レンジローバーの新しいP400に搭載される直列6気筒ユニットは、排気量3.0Lで、ツインスクロール・ターボによって過給。電動スーパーチャージャーとマイルドハイブリッド・システムも組み合わさり、最高出力401ps、最大トルク56.0kg-mを生み出す。従来までの3.0L V6スーパーチャージャー・ユニットと置き換わる、インジニウムユニットの新バージョンとなる。

英国での価格はP400eプラグイン・ハイブリッドに次ぐ設定。だが最高速度や加速性能では、P400eよりも優れている。

2.2tの車重に負けない鋭いレスポンス

レンジローバー・スポーツHSTの第一印象で最も強いのが、この新しいエンジンの洗練性だろう。ランドローバーが長い時間をかけて、価格帯を問わずに最もスムーズで存在感の薄いエンジンを目指して開発したのがこの直6ユニット。サイレント・タイミングチェーンなどの技術も取り入れられており、その努力が結実している。

都市部での道路では非常に静かに走行する。流れに合わせて穏やかにアクセルペダルを操作している限り、変速も気づかない内に終了している。だがスロットルの状況によっては、変速時のフィーリングが一定せず、シフトアップ時に不意にトルクが増強されるような振る舞いも感じられた。しかし、ほとんどの場面では滑らかにクルマを進めてくれる。

ランドローバー・レンジローバー・スポーツHST
ランドローバー・レンジローバー・スポーツHST

マニュアルモードでエンジンの回転数を引っ張れば、2.2tにも及ぶ車重に負けず、直列6気筒エンジンのレスポンスは鋭くフレキシブル。もしこれで変速時のフィーリングに一貫性があり、さらに車重も500kgほど軽ければ、充分にスポーティな味わいとなるだろう。

パワーデリバリーも漸進的で、同じJLR製の4気筒インジニウム・ターボエンジンより、6000rpm以上の回転数でも息苦しさを感じさせない。静かいながらも音響面でも素晴らしく、低回転域では控えめなハミングだが、回転数の上昇とともにトーンも上がってくる。

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