希少価値の5.0L自然吸気V8 レクサスRC Fへ試乗 気になるATと車重
公開 : 2019.09.04 09:50
1万ポンド(130万円)の追加費用で装備できるトラックパックでRC Fはドイツの高速クーペに匹敵する魅力を獲得できるのでしょうか。英国でも希少な、大排気量V8エンジンを搭載したトップグレードを評価しました。
英国でも数少ない大排気量の自然吸気V8
モデルライフ中期を迎えるレクサス製2ドアクーペ。RCの中でもトップグレードとなるRC Fだが、英国のアスファルトでの試乗は初めてとなる。いまのところ、欧州のミドルサイズのプレミアム・クーペという市場で存在感を示すのはなかなか難しいのが現状。ドイツ御三家、アウディ、BMW、メルセデス・ベンツに独占されているような状態なのだから。
圧倒的な強い支持のおかげで、アルファ・ロメオやボルボなどからは独自性の高いモデルが誕生するキッカケにもなったことも事実ではある。だが、トヨタのラグジュアリー・ブランドは、そこに食らいつくべく、諦めてはいないようだ。
欧州での販売台数は少なく、2018年に欧州全域で販売されたRCは1300台程度ということもあり、どこかまだ新鮮味も感じられる。ちなみにアウディは2018年3月だけの1カ月間で、A5とS5、RS5とを合わせれば6000台近くを販売している。
人気は限定的とはいえ、RCにも魅力がないわけではない。電動化技術の導入が進む中で、このクラスで選択できる唯一のハイブリッド搭載モデルが選べる。またRC Fの場合、英国で販売されているクルマの中でも数少ない、自然吸気のV型8気筒エンジンを搭載したモデルとなる。
今回の試乗車は9750ポンド(126万円)もするトラックパックを装備。軽量な鍛造ホイールにトルクベクタリング機能を持つリアデフ、カーボンセラミック・ブレーキにブレンボ製の赤いキャリパーが装備されている。ちなみにこれはトラックエディションとは異なる。そちらの方は、一層高価で走りにシリアスなクルマだ。
大きな進歩を獲得したインテリア
印象としては、オールドスクールでありながらハイテクも満載で、欠点もなくはないが、充分に好感の持てる仕上がりだった。フロントバンパーのデザインが変更されLEDヘッドライトが装備されているが、RC Fのアピアランスには大きな変化はない。縦に2本並ぶテールパイプや格納式のリアスポイラーも、変わらず付いてくる。通常のRCも記憶に残るスタイリングだが、スポーツ度が増す「F化」によるこれみよがしな加飾は、ドイツのライバルモデルよりは控えめだとはいえるだろう。
一方でインテリアの変化はかなり大きい。品質面での細かなカイゼンが積み上げられ、素材の質感も上質になり、キャビンはソリッドな雰囲気でまとめられている。非常に使い勝手の悪かったインフォテインメント・システムもアップデードされた。画面は大きくなり、光沢感のあるモニターでのメニュー操作も簡便になった。
なんといっても、われわれの興味をそそるのは自然吸気のV型8気筒エンジン。だが実はパワー自体は、先代よりも低くなっている。理由は、より現実環境に近く厳しいWLTP(乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)に合致させ、環境負荷を減らしたため。最高出力で13ps、最大トルクで1.0kg-mほど弱くなっている。だが実際走らせてみると、明確に実感できるほどでもなかった。
一方でエンジンの特性変化に合わせてファイナルレシオを調整し、新しいローンチコントロール・システムも導入。軽量化も施されており、0-96km/h加速に要する時間は、先代よりも短縮されているからご安心を。この新しいローンチコントロールは、多くのライバルモデルよりも遥かに低い、2000rpm以下の回転数で発車するようになっている。レクサスによれば、最もリアタイヤのトラクションを稼げる回転数だということなのだが、本当なのだろうか。