エンジンは720S譲り ラゲッジスペースは570L マクラーレンGTに試乗

公開 : 2019.09.21 09:50

マクラーレンのラインナップの中で最もユーザーフレンドリーな、グランドツアラーを冠した「GT」がデビューしました。その仕上がりは、名前以上にグランドツアラーなものですが、スーパーカーらしさも残っているようです。フランス・ニースで評価しました。

570GTに置き換わるグランドツアラー

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

マクラーレンによれば、ニューモデルの「GT」は、軽量でダイナミックで、マクラーレンらしい新種のグランドツアラーだという。良質でも、最高という領域までには届いていなかった570GTに置き換わるモデル。しかも570Sよりも豪華で俊足で実用的。顧客からの要望を受けて誕生したのが、マクラーレンGTとなる。

570GTよりも柔らかくなり、デザインが新しくなり、名前が変わっただけではない。独自のカーボンファイバー・モノセルを採用し、ボディ自体が専用となったほか、エンジンは720Sにも採用されている4.0LのV8ターボを搭載。ターボは小径なものになり、ピストンは高圧縮化されている。

マクラーレンGT
マクラーレンGT

サスペンションも、720Sに開発されたプロアクティブ・シャシー・コントロールと呼ばれる電子制御の油圧システムを導入。ステアリングやブレーキ、スタビリティ・コントロールも専用セッティングとなったほか、タイヤも濡れた路面でのグリップ力を高めた、新コンパウンドのピレリPゼロを装着する。

エンジンの搭載位置は、ラゲッジスペースを広くする目的もあってさらに低くなり、段差を超えるときなどに有用なノーズリフト機能も付く。メルセデス・ベンツCクラスと変わらない素振りで、スピードバンプ(速度抑制用のコブ)を超えることができる。車内には先代よりも5倍も高速化された、新しいデジタルインスツルメントとナビゲーションも装備された。

60%に及ぶ新設計部品と720S譲りのエンジン

この内容ながら、価格はマクラーレンとしては控えめな、16万3000ポンド(2119万円)。マクラーレンは全体の販売台数の25%を占めると予想している。GTはいまのところ2023年まで生産される予定となっているが、スパイダーの登場はなく、クーペのみとなるようだ。

GTを構成するの約60%の部品は新しく設計された専用品とのことだが、雰囲気はあくまでもマクラーレン。新種のマクラーレンでも、新種のグランドツアラーという印象でもないのだが、それで問題ないといえる。

マクラーレンGT
マクラーレンGT

インテリアの質感は570GTと比較すると大きく進化しているが、車内空間が大きくなったわけではない。ラゲッジスペースは570Lに大きくなり、2+2のリアシートを荷室に利用できるクルマを除けば、クラスではトップの容量だといえる。

インテリアの仕立ては細部まで手が施され、居心地はとても良い。アストン マーティンDB11ベントレー・コンチネンタルGTなど、伝統に裏付けられたグランドツアラーほどに豪華絢爛というわけでもない。

エンジンは720Sから静かになったわけではないが、防音材が追加され、排気音も調律された。それでも、まだシャープに迫ってくる音響は生きている。もし従来的な雷鳴のような唸りを響かせるグランドツアラーを狙ったのなら、エンジンにはクロスプレーン・クランクシャフトを採用して、不等間隔での燃焼にすることもできただろう。スロットルを全開にせずとも、V8エンジンらしいサウンドが味わえることになるはず。

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